経営者が「話してよかった」とつぶやく瞬間について
たくさんの経営者や起業家の相談に対応していると、自分でも「うまく対応できたな」と思う時と、「これはイマイチだったな」と感じる時があります。不思議なもので、こちらの手応えがある時ほど、相手の満足感も高く、逆にこちらが「なんだかしっくりこない」と思う時は、相手も同じように感じていることが多い。当然といえば当然ですが、この違いはどこから生まれてくるのでしょうか。
まず第一にあるのは、相手の本音に迫れるかどうかです。表面的な悩みの背後には、もっと根っこの部分にある「本当に気になっていること」が隠れています。
けれども、多くの場合、相手は意識的に本音を隠しているわけではありません。むしろ「それを言っても大丈夫」という安心感がないから、言葉にできていないのです。
そんな時に有効なのが、こちらの感じた印象をそのまま言葉にしてみること。「今のお話を聞いていると、少し迷いも感じますね」といった一言で、閉じていた心のドアがすっと開くことがあります。
一度その入口が開くと、連想ゲームのように、次々と本音が顔を出す。そしてこちらも「ああ、そういうことだったのか」と腑に落ちる瞬間が訪れます。
ここが分かるかどうかで、相談後の満足度は大きく変わります。本音を踏まえて提案した解決策は、たとえ表面的には同じ内容でも、相手の腹落ち度がまったく違う。「やってみよう」というエネルギーの出方が、まるで違うのです。
もう一つの共通点は、解決策を急がないことです。
相談を受けると、つい「答えを出してあげなくては」と思う方がいます。けれども、実は人は他人の答えでは動かない。自分の中から出てきた答えにこそ納得し、行動につながります。
相談者が安心して自分の気持ちを言葉にできるよう、少しの沈黙を恐れず待つこと。すぐにアドバイスをしないことで、相手が自分の中にある答えを発見する時間を持てるのです。
こちらの役割は「答えを与える人」ではなく、「答えを引き出す伴走者」。相談とは、そうした共同作業なのだと感じます。
そして三つ目は、相手の未来に焦点を合わせているかです。相談というのは往々にして、過去の出来事や不満から始まります。「売上が伸びない」「人材が育たない」「人間関係がうまくいかない」――。けれども、過去の出来事をいくら掘り下げても、気持ちは軽くなりません。むしろ、「これからどうなりたいか」という未来の姿に目を向けた瞬間、空気が変わるのです。
「本当はどうしたいですか?」この一言で、話の方向が変わることがよくあります。人は誰でも、未来を描いた瞬間に前に進みたくなるもの。相談してよかったと言われる時というのは、相手が自分の中にある“次の一歩”を見つけた時なのだと思います。
相談を重ねるうちに気づくのは、「相談とは問題解決の場」ではなく、「気づきの場」だということです。話しているうちに自分の考えが整理され、気づいたら答えが見えている。それが「相談してよかった」の正体ではないでしょうか。
私たちはつい、結果を出すことに焦点を当てがちですが、相手にとっては“分かってもらえた”という実感こそが、一番の成果です。誰かに話を聞いてもらうことで、自分の中の霧が晴れていく。加えて、全く新しい角度からアイデアが手に入れば、満足度はさらに上がります。
多くの中小企業の経営者は、「誰に相談していいかわからない」という経営課題を抱えています。社内では立場があり、同業者には言いづらく、専門家には距離を感じる。けれども、そんな時こそ第三者の視点が、思考の整理と意思決定を助けてくれます。
もし今、少しでも「どうしたものか」と迷うことがあれば、一度お話を聞かせてください。きっと「相談してよかった」と感じていただけると思います。
私たちアトリオンは、経営・人材・プロモーションという“会社の血流”に関わるテーマを一気通貫で扱っています。現場のリアルを理解したうえで、経営者の本音と未来をつなぐお手伝いをしています。
もし今、少しでも「どうしたものか」と迷うことがあれば、一度お話を聞かせてください。きっと「相談してよかった」と感じていただけると思います。
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