第515号 社長にしか倒せない、店長達の貴重な時間を奪い続ける社内の敵とは

「ただ維持費が高くなってしまっただけでした」
ある社長がおっしゃいました。
大きなメリットが見込まれるはずだった他社からの誘いに乗ったところ、条件を満たすためには別の課題解決が必要とのこと。
社長が疑問に思ったのは、参加する前にその課題の存在に気がつくことができない形になっていたことでした。
ビジネスはいつも「見」ばかりでは良い結果を得ていくことはできません。
そのため経営者の中には
「何でもチャレンジ」
「とにかくやってみる」
という突進型スタイルの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
別のある社長はおっしゃいました。
「失敗していちいち落ち込んでてもしょうがない」
「次、気をつければいいんだから」
私は経営者は誰もがこの突進型スタイルであるべきだと言いたいわけではありません。
人はそれぞれ考え方が違います。
一番良いのは、自分にあっているスタイルが何か探り、これがいいと決めて貫くことではないでしょうか。
店舗型のビジネスにおいて、社長が人の力で業績を上げていきたいとした時、「どんな考え方の人であっても当社では気持ちよく働けますよ」といった状態にしておくことが重要です。
特定の人にしか受け入れられない体制をとっていますと、人手不足はもちろん、余計な労力や手間がかかり拘束されてしまうからです。
そのためにどんな工夫が必要なのか。
今回のコラムでその1つ例を挙げてみます。
それは
「このお店で働こうかな」
と考えている「スタッフ候補の方」がいらっしゃった時です。
どの企業もあの手この手で「うちで働くといいですよ」と人手を確保するためのアピールに専念されているのではないでしょうか。
できることなら、それがうまく人を惹きつけられ、雇用契約を交わすことができ、お互いにメリットが得られるよう共に頑張れる形が実現できればいいのですが、この段階において経営者にとって大事な視点があります。
それは
自分にあう店なのかどうか、実際に働き始めてみないとわからない状態のままにしていてはならない
どういうことかといいますと、いざ働き出してみたら
「あれ?」
「私には合わない職場なのでは?」
といったことが起こり得るからです。
このようなミスマッチがおきてしまうと、特に店舗のリーダーである店長の時間と労力が多く失われてしまいます。
それは例えば
・契約を交わす業務が発生し
・基本的な教育も必要となり
・持ち場やシフトの配置の設定をしなければならなかったり
など。
中でも一番失われては困るのは
・苦労して採用した人がすぐ辞めたという事実を知った、他の仲間達のモチベーション
ではないでしょうか。
もし社長が「各店長には業績を上げる事に専念してほしい」と思っていたとしても、このようなミスマッチが頻発するような環境のままでは、各店長達も稼ぐことに専念することができません。
店舗型のビジネスによくある、「返事だけで実際はやらない」という事態が度々発生してしまうことにつながります。
よって「採用した人が職場に合わなかったという事態」は社長にとっての敵と言えます。
この敵の特徴は当事者達の目には見えることはありません。
当たり前ですが
「新たな人を採用したら、すぐ辞められてしまって、それが原因で結果を出せませんでした」
などと言ってもらえるわけではないからです。
この、事前に手をうっておく行為。
多くの企業で未実施となっています。
その原因はおそらく人手が余っていた時代の名残だと私は捉えています。
当時の店舗型のビジネスは、求人広告を出せばすぐに補充できる時代でした。
そのためスタッフとして採用され働き始めた時、多少自分に合わない職場だとわかっても
「せっかく仕事に就けたんだから、自分が変わらなければ」
といった意識が生まれやすい状況でした。
たとえば私が学生の頃、アルバイト先で
「あの人? 20分働いて合わないからって辞めちゃったよ」
と聞いて、皆が
「なんて非常識な人なんだ」
といった雰囲気がありました。
しかし今は違います。
どこも人手不足で働き手が優位な立場になっています。
もしそんなことがあったとしても
「よくあることだよ」
「いや、働いてくれただけマシ」
と言われることでしょう。
昔は
「うちはこういった職場ですよ」
などと、苦労してまで事前に公開しておく必要性などありませんでしたが、今はそういうわけにもいきません。
何も手を打たず
「とにかく働いてみて下さい」
「うちの職場が貴方に合わなかったら他を探してね」
というスタイルのままでは現場が稼ぐことに専念できない原因となってしまいます。
他のある社長がおっしゃいました
「私が社員達の見えないところで、どれだけ努力してるかってことを伝えたって・・・しょうがないですからね」
先日、ある社員に「どうして私は素晴らしい結果が出せたのか」をプレゼンさせたそうです。
そのプレゼン内容を発表する前の精査する過程において、彼の上司が頭を抱えたのは
「全て自分が頑張ったからです」
「誰の世話にもなっていないぜ」
といった内容だったから。
「コイツはなんと世間知らずなやつだ」
とストップ。
念の為、社長に
「こんな内容で発表させていいのでしょうか?」
と相談があったとのことですが、それをご覧になった社長は
「何も問題ない」
「自信満々でいいじゃないか」
「元気が一番」
とGOを出したとのことでした。
御社はいかがでしょうか。
「自分にあう店なのかどうか、実際に働き始めてみないとわからない状態」
のままになっていませんか。
店舗で働く人達が、結果を出す行為に専念できる環境が整っているでしょうか。
店舗型のビジネスにとって店舗は唯一利益を得られる箱です。
各店舗のリーダーである店長達には皆をうまく導いて、堅実に利益を上げていけるお店を築いてもらいたいのであれば、どんな工夫が必要なのか。
会社として事前に手を打っておくべきではないでしょうか。

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