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教育だけで終わりがち? 社員のAIスキルの育て方

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

社員のAI教育はまさにまっさかり。様々な教育機関・IT企業から、これも様々な教育プログラムがオンライン・オフライン両方膨大な種類がリリースされ、顧客獲得にしのぎを削っています。この動きは、国の教育訓練系助成金がかなり充実していることもあって、大人気といえる様相を呈しています。

 

AIを社員に使わせるためには、確かに一定のスキルが無いとうまくいかないことは事実です。少し前までは「プロンプトエンジニアリングを教えないとだめだ」というキーワードがちまたにあふれかえっていましたし、現在では「AIエージェントを組めるスキルが必要だ」ということも頻繁に耳にします。これらの基礎知識を社員が備えていることは、確かに良いことに間違いありません。しかし、それは「AIを現場で使える必要かつ充分な知識なのか?」という観点で問われれば、それに対する答えは残念ながら「否」です。理由は簡単で、「例題に従って勉強したものは、実務ではなかなか応用が利かないから」です。では、どうやって「教育だけで終わらせずに現場仕事にきちんと応用できるようにする」のでしょうか。その点を今回は論じてみたいと思います。

今回は…

  • 教わったことを実行できない二つの壁
  • 教育と同時進行で進めるべきこと

の2点です。

教わったことを実行できない二つの壁

各種AI教育では、基本的なAIの使い方やその応用方法について、どのカリキュラムでも教えてくれます。また、合間には理解度テストもありますので、教育効果はそれなりにあるはずです。ところが、教育が終了しいざ自分や同僚の業務のAI化に手を付けよう、という段階になってとまどうことが二つあります。

その1:業務に例外が存在していて定型化できない

どんな業務にも例外作業が存在するものですが、これが実はあまり顕在化していません。例えば、教育をうけたあなたが、同僚である特定の人(Aさんと呼びます)の担当している一つの業務にAIを導入し、Aさんが不在でも他の人が代行できるようにしよう、と考えた場面を想定しましょう。この時、こんなことが起きるはずです。

あなた:「Aさん、この業務をAI化しますが、内容を教えてくれますか?」

Aさん:「はいわかりました。これこれこうで・・・」

あなた:「意外とシンプルですね。結構簡単にAI化できそうです」

Aさん:「それと、XXXの場合はXXXで・・・」

あなた:「そうなんですね。わかりました。」

Aさん:「あと、YYYの場合はちょっと面倒でZZZとXXXをやって・・・」

あなた:「え?結構複雑ですね」

Aさん:「まだあるんですが、この時はああして・・・」

あなた:「え~~?!」

・・・・・・・・・

以上は、私の経験上ではほぼ間違い無く起きます。これに対してあなたはどこまで対応できるでしょうか?例外処理のオンパレードでは、AIに対する指示があまりにも複雑化し、それが故にいわゆる誤動作(AIの回答精度の低下、誤回答など)が発生する率が高まってしまいます。それ以前に、場合によってはAさんが例外処理を説明しきれない可能性もあります。

このようなことは、特に人間力に頼ってきた小規模な組織では、常識のように発生することです。

壁はこの一つではなく、もう一つあります。

その2:データが整っていない

業務に使う一覧表などが一見整備されているとしましょう。それを使った業務をAI化するため、AI化担当であるあなたは、そのデータをAIに設定しようとするはずです。ここで大きな壁にぶち当たります。それは、

 表が正しい表になっていない

というものです。よくあることを列挙してみましょう。

 「数字が入っているはずのセルに文字が入っている」

 「セルが部分的に結合されていて、他のレコードと明らかに異なる」

 「入っているべきデータが入っていないところがある」

 「表にはなっているが、中身が文章になっている」

いかがでしょうか?AI化したいと思う業務であれば、それに使う表もかなり大きなものだったり、数が多いと思います。そのようなものは数日で作られたものではなく、おそらく数年かかってコツコツ作られてきたものでしょう。そのような場合、どうしても人間のやる作業ですから、上記のようなことがちょっとずつ入ってしまいます。これをそのままAIに流し込もうとすると、大抵の場合はAIがうまく動作しない原因となってしまいます。AIに流し込む前に、この表をきれいにしなければならない、という人間仕事が追加で必要となることは間違いありません。

こういった壁が目の前に立つと、せっかく教育を受けたAI要員も戸惑ってしまうことは間違いありません。

教育と同時進行で進めるべきこと

上記のような壁があり、教育が終わった社員がAI化に着手できない、ということを防ぐためには、AI教育と同時に「AIを受け入れる環境を整える」必要があります。しかしそのハードルとなっている前述の不都合なことは、そう簡単には解決できません。AIを入れるために人手がかかる、というなんとも皮肉なことになってしまいます。

これらの「壁」を全部いっぺんに取り払うことは大変すぎますので、現実的な選択肢としては、こんな考え方が適切となるでしょう。

 「何にAIを入れる」のではなく「AIに適した仕事を探す」

です。この観点でAI化すべき業務を探すと、前述した壁がある業務は対象外となります。また、大抵の場合「この業務が大変だからAI教育を受けさせたのに、肝心のその業務はAI化が難しい」という事態にもなるでしょう。しかし・・・

「壁を取り払ってからAI化する」という進め方では、せっかくのAI化の機運がしぼんでしまい、前に進まなくなる可能性が高い

という現実をしっかり受け止めなければなりません。たとえ効果は小さくとも、AI教育を受けた人材に対して適切な題材を与え続けないと、せっかくの教育がムダに終わってしまいます。その小さなトライを何回も回しながら教育が終わったAI人材を、経験豊富なAI担当社員に育て、その間に地道に「壁」を取り払う作業も進める、ということが肝要です。

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「AIを入れました。でもたいした効果は上がっていません。」とおっしゃる社長の話は良く聞きますが、その原因は大抵今回書いたようなストーリーに乗ってしまっています。AIは万能に見えますが、なんでもうまくそつなくこなしてくれる、という都合の良いものではありません。教育を受けた社員が、真のAI人材になるよう、現場の準備や協力が不可欠であることを、是非ご理解頂きたいと思います。

当社ベルケンシステムズ(株)では、業務可視化支援をはじめとする様々なコンサルティングサービスプランをご用意しております。ご興味があれば是非当社ホームページをご覧ください。

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