ハノーバーメッセ2026速報その2 AIによって迫られる業務ソフトの変革
前回に引き続いて、ドイツハノーバーで開催されている年に一回の展示会、「ハノーバーメッセ2026」について、その取材内容をいち早くお届けする二回目です。今回は、AIが普及期・活用期に入ったことによる、業務ソフトウェアへの激震について報告したいと思います。
近年、業務用のソフトウェアは、一昔前の「自社のためにゼロから開発してもらう」ソフトウェアから、クラウドサービスにほぼ置き換わってきたと言えます。月額課金などのサブスクリプションモデルで対価を支払い、機能を使い続ける…。これが軽い初期投資によるシステム化・デジタル化の一つの投資対効果の壁を低くする定石となりました。
昨今では、このクラウド化の動きがさらに加速して充実することにより、「必要な機能を設定などで実現するタイプのソフトウェア」、つまり「ノーコード、ローコード化」も進みはじめました。これらは、特にソフトウェアを開発することなく、設定だけで必要な機能を満たすことができ、普及が加速してきています。ソフト開発の経験がない人でも、ある程度の業務ソフトが作れてしまう、というとてもローコストで便利な世の中になってきました。このコラムの読者の方でも試してみたことがある方が大勢いらっしゃると思います。
これら、いいことずくめのノーコード・ローコードですが、それらに共通する問題は、「機能がサイロ化してしまう」というところでしょうか?「サイロ」という何やらよくわかりにくい用語がを使ってしまいましたが、要するに実現したソフトウェアの機能が、ある特定の機能や仕事に特化してしまい、他のシステム(つまり横に立っているサイロ)とサイロが横に並ぶように立ってしまうことを意味しています。
他のサイロ(つまりソフトウェア)は、別のベンダーが作った場合もありますし、別のローコードツールで自作したものである場合もあるでしょう。これにより、二つのサイロが立った場合、これら二つを別々に管理しなければならなくなる、という重荷を背負うことになるわけです。これがまだ二つならマシですが、もっと数が多くなると、もはや管理できる規模ではなくなってしまいますし、それぞれが別々に費用もかかるので、一つ一つはローコストでも、数が増えることで累積的に高くなり、予算的にも膨らんでしまいます。このような新しい仕組みで小さく部分的なデジタル化を進める場合には、このようなサイロ化を防止するため、全体計画を立てた上で、それを部分的に実行する必要があったわけです。
そこへ、昨今のAIによるソフトウェア自動生成のトレンドが来ました。皆さんの中にもお使いになっている方もきっといらっしゃるはずです。そんな中、今回のハノーバーメッセで見た、いくつかの業務ソフトウェアパッケージの中に、極めて注目するべきAI利用のトレンドが見えたのが私にとっては印象的でした。それが、
「ソフトウェアを画面設計などなしに細かな機能部品に分割して提供」
できるようにし、
「利用者がAIに要求を伝えると、必要な部品を選択して集め、組み合わせた上で画面の提供まで行う」というものです。少し話が難しいかもしれませんが、洗濯機を例にとって説明します。
洗濯機が、ポンプ、モーター、給水、排水、という4つの独立した部品で構成されているとします。ユーザーが例えば「脱水機能だけが欲しい」と考えれば、「モーター、排水」の機能だけあれば要求を満たせます。ただ、それだけですとケースにも入っていませんし、操作するためのパネルもありませんので人間が使えません。それをAIが「必要な機能をケースに入れ、それに合わせた操作パネルを作って完成させる」という形に自動的に整えてくれれば、脱水機が完成します。
将来全自動洗濯機に改造したい場合は、その時にAIに「脱水機に選択機能を追加せよ」と指示すれば、残ったポンプと給水の機能部品を持ってきて、それを既存の脱水機の機能に追加し、全自動洗濯機として簡単に改造してくれるでしょう。
機械製品ですので、実際にはこのようにうまくいきそうにありませんが、ソフトウェアであれば実現可能です。
この例で示したポンプやモーターなどの各種機能部品のように、業務ソフトウェアの部品を画面無しに提供し、それをAIがユーザーの指示に基づいて「機能を組み合わせ、画面や操作ボタンを配置する」ことができれば、ユーザーは自由にソフトを作ったり壊したりすることが可能となります。もちろん、従来型のローコードツールでもこのようなことはできました。しかし、ここで重要なのは、それがソフトメーカーの企業の壁を超えて他の種類のソフトウェアとの間であってもAIが両方を接続可能で、しかもあたかも一つのソフトウェアのような画面まで提供可能である、ということです。
従来型のソフトであれば、メーカーが違えば標準で接続する方法は限定されてしまいますし、画面統合の実現はかなり難しい状況でした。従って、「全体を一つのソフトウェアとして関連させて動かしたい」と考えているユーザーにとっては非常に都合が悪かったわけです。そこへ、全体をコーディネートし構築する役割のAIが登場し、ユーザーの指示に従って必要な機能部品をあつめ、集めた部品の間の接続や、統合画面などをAIが作製することによって、全体を一つのソフトウェアとして使えるようになるわけです。
もちろん、これを実現しようとすると、AIが使える「部品」を数多く取りそろえる必要があります。従来型のソフトウェアを作ってきたメーカーにとっては大きな戦略転換を余儀なくされることは確実です。なにしろ「完成体としての完成度を要求される時代から、部品を単体で細かく提供して欲しいという要求に応えられるように自社製品を改革する」ことになるからです。そこには「部品売りなどしたくない。AIに組み合わされるのは避けたい。」という抵抗勢力も出てくることは予想されますが、今回のハノーバーメッセでは敢えてそこに切り込んでくるソフトメーカ-が出始めた、ということが印象的でした。
生成AIがソフトウェアを作るようになり、「SaaSの死」という言葉が業界で流行しましたが、私にとっては、それは「SaaS(ソフトウェアをサービスとして提供すること)の死だけではなく、パッケージソフトや、ノーコードツール、ユーザーの要求に基づいて設計構築するソフトなど、すべての従来型のソフトウェアの変革を要求される出来事なのだと受け止めています。
パッケージソフトの中であっても、生成AIによって機能を自由に組めるものがそろそろ出回り始めると思います。本来はそれが他社のソフトウェアともシームレスに接続できるべきですが、そこまでいきなり理想的なものにはならないでしょうから、せめてこれから業務ソフトを選定する場合には、生成AIによる機能変更ができるものを選択するのが、賢いユーザーであると私は思います。
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