事を為すに優先順位を間違えるな

今日は私の子どもたちに経営の話しをしておこう。
第3話
【事を為すに優先順位を間違えるな】
これの前提として、事の本質を見極め、見誤らないというのがある。例えば、今ひとつの新しい事業を始めようとしているとする。その前に、その事業の本質を十分に見極めておく必要がある。
事業の本質とは何か。何のためにこの事業をしようとするのか、その目的を徹底的に追い詰めて考えておくことだ。それを明確にしておくことが、今後事業展開をする際、羅針盤となって我々を目標に導いてくれることになる。
こうして事業の本質を見極め、目的が明確になって初めて行動することができる。その際、最も大事なことが、事の優先順位を間違えるなということだ。
何を先に為し、何を後にするか。
この判断をしっかりとすることが、事の成否を左右する。経営者に求められる重要なマネジメントの一つだ。
私は長く経営者をやってきて、何度もこの「優先順位」というものの大切さを思い知らされた。経営者は毎日、実に多くのことを考えなければならない。
売上をどうするか。社員をどうするか。資金繰りをどうするか。新しい商品をどうするか。お客様への対応をどうするか。取引先との関係をどうするか。挙げればきりがない。
そして、どれも大切なことに見える。だからこそ、経営者は迷う。あれもやらなければならない。これもやらなければならない。そうしているうちに、何から手を付けてよいのか分からなくなる。
私は、これが経営者にとって非常に危険な状態だと思っている。何でも大切だと思う人は、結局、何も大切にできない。本当に大切なものを見極め、まずそれに集中する。それが経営者の仕事なのだ。
例えば会社の業績が悪くなっているとする。売上を増やそうと、新商品を考える。新しい営業先を探す。広告を増やす。社員を増やす。いろんなことを考えるだろう。しかし、その前に考えなければならないことがある。
そもそも、なぜ売上が落ちているのか。お客様が必要としているものと、自社が提供しているものがずれているのではないか。商品そのものに問題があるのではないか。営業の仕組みに問題があるのではないか。社員の教育に問題があるのではないか。
原因を見極めないまま、いきなり対策を始めてはいけない。病気になった時と同じだ。熱があるからといって、熱を下げることだけを考えていてはいけない。なぜ熱が出ているのか。その原因を調べる。
経営も同じなのだ。まず本質を見る。次に原因を見る。そのうえで、何を最優先にするのかを決める。この順番を間違えてはいけない。そして、優先順位を決めたなら、覚悟を持って取り組むことだ。
あれもこれもと手を出してはいけない。経営者が一番やってはいけないのは、重要なことを後回しにして、どうでもいいことに時間を使うことだ。忙しく働いているからといって、仕事をしているとは限らない。
経営者が朝から晩まで会社にいて、たくさんの仕事をこなしていても、本当に重要なことを何も決めていなければ、経営者としての仕事をしているとは言えない。経営者の仕事は、作業をすることではない。
何をするのかを決めること。そして、何をしないのかを決めることだ。これもまた経営者の大切な仕事なのだ。
私は若い頃、この「やらないことを決める」ということが、なかなかできなかった。新しい話が来れば面白そうだと思う。新しい事業の話があれば、なんでもやってみたくなる。
人から頼まれれば、断ることもできない。そんなことを繰り返しているうちに、自分が本当にやらなければならないことが後回しになってしまう。
今振り返れば、これも経営者としての未熟さだったと思う。人生にも同じことが言える。人生は時間が有限だからだ。何をするかを決めることは、何に自分の時間を使うかを決めることでもある。そして何に時間を使わないかを決めることでもある。
君たちもこれから経営者として、たくさんの選択を迫られることになるだろう。その時、目の前に現れたものを片っ端から処理するのではなく、一度立ち止まって考えてほしい。
「これは本当に今やるべきことなのか。」
「もっと先にやるべきことはないのか。」
「そもそも、これは我々がやるべきことなのか。」
この三つを自分に問い掛けてほしい。そうすれば、少しずつ見えてくるものがある。経営者は、何でも自分でやる人ではない。本当に重要なことを見極め、それを最優先にして、人と時間とお金を集中させる人なのだ。
事を為すには、順番がある。急いでいるからといって、その順番を飛ばしてはいけない。焦っている時ほど、本質を見る。迷った時ほど、目的に戻る。そして、何を先に為すべきかを考える。私は経営者として長く生きてきて、ようやくそのことの大切さが分かるようになった。
だから君たちに伝えておきたい。「何をするか」ばかりを考える経営者になるな。「何のためにするのか」を考え、「今、何を為すべきなのか」を考える経営者になってほしい。
事の本質を見極め、優先順位を間違えない。
それだけでも、経営の判断は大きく変わってくる。そして、その一つひとつの判断の積み重ねが、やがて会社の未来をつくっていくのである。
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