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地域に根差した身の丈経営は強い

SPECIAL

親子経営コンサルタント

ビジネス・イノベーション・サービス株式会社

代表取締役 

オーナー社長と後継者のための、「親子経営」を指導するコンサルタント。みずから100億円企業を築くも、同族企業ならではの難しさや舵取りの大変さで苦しんだ実体験を指導。親から子へ失敗しない経営継承の極意として「親子経営」を伝授する。

地域に根差した身の丈経営は強い

今日は親子経営企業の強みを活かした独自の経営スタイルについて第4話。

【地域に根ざした身の丈経営】


 以前、私の友人の会社の経営理念を見て感心、納得した覚えがある。「最大の会社を目指さず、最良の会社を目指す」というもの。創業者である彼の父親が制定したようだ。彼の会社はある大手飲料メーカーの地域ディーラー。

故に彼の会社は、あらかじめ営業エリアは限定されている。決められた地域でシェアの拡大を目指すことになる。多くの地域代理店、特約店といった事業をしている会社はみんな同様であろう。

その当時、私は建設資材販売商社を経営していた。バブルが弾け、さらに公共工事が抑制され、建設不況が続くなか、私はとにかく売り上げを上げようと市場を全国に求め展開し始めていた。

そんな私からすると、彼の会社のように販売エリアが限定されているビジネスには限界が初めから存在しており、不自由なのではないかと感じていたものだ。その後、売り上げ拡大をひたすら追い求めた私は破綻してしまうことになる。

 現在、私は親子経営コンサルタントとして活動させてもらっている。私の顧問先企業の1社に建設機械レンタル会社がある。実はこの会社も営業エリアが限定されている。といっても、この会社は自ら営業エリアを限定しているのだ。

建設機械レンタル会社の顧客は通常、建設会社になる。ところが、この会社は顧客を建設会社でなく、解体業者に絞っている。限定しているわけでなく、これまでの取引状況から自然とそうなっているのだと思われる。

現状をいうと、埼玉県に本社を構え、東京都内を主な営業エリアとし、解体業者を主な取引先としている。これが、実情を知ると、なかなかな経営戦略であることに気づく。まず、顧客を解体業者に絞ることで、専門性が出る。

解体業者が必要とする建設機械のみならず、特殊なアタッチメント、その他現場で必要なありとあらゆる物をサービスしている。また、解体業者は大手建設機械レンタル会社の与信が通りにくく参入障壁があり、同業他社との競争は比較的少ない。

さらに、主な納入先現場は東京都内である。これは、埼玉にある機械、重機置き場から配送をカバーできる範囲になる。都内への交通アクセスが便利であり、機械置場が郊外にあることで地代を低く抑えることができている。

そして、営業エリアの東京都内は常に全国で一番建設市場が賑わう地域である。公共工事不況が地方の建設会社を今も疲弊させているが、東京都内の公共工事並びに民間建設工事は相変わらず堅調に行われている。

この顧問先の戦略はあえて言うなら、「自ら市場を限定し、シェアを高める」ということではないだろうか。私がお付き合いさせていただいて、もう10年近くなる。この間、コロナ禍も含め、業績は毎期増収増益を成し遂げている。

 先に話した私の友人の飲料メーカーの地域ディーラーである会社も、同じようにコロナ禍も無事にやり過ごし業績を伸ばしていると聞いている。限定された市場の中で、同じようにシェアを高める戦略が功を奏してきたのだろう。

私の場合も実は、当初は必然的に営業エリアは限定されていた。というのも淡路島に会社があったからだ。当時はまだ四国側、本土側にも橋が架かっておらず、営業エリアが島内に限られていた。

私が30才で親父に代わり社長になったころには、徳島側に鳴門大橋が架かり、本土側の明石海峡大橋が建設中だった。そのころ、島内の公共工事を含む建設市場がいろいろな要因で急激に減少し始めていた。

私の会社が創業来、初めて赤字を出したのが、ちょうど私が社長就任前のことだ。島内の建設市場が今後も減少することが確実ななか、今後どうしていくのかが社長に就任したばかりの私に与えられた課題であった。

30才という若い私が出した結論は、島外に市場を求めていくという拡大策だ。手始めに神戸市に営業所を開設をし、その後、大阪、東京、岐阜、名古屋、沖縄、札幌と営業所、支店網を広げていくことになる。

売り上げは、紆余曲折があったけれど概ね右上がりに増えていった。いつしか、売り上げが100億円を超え、125億円までいく。そこを頭に売り上げが停滞をし始める。そして売り上げが右下がりになる。

後は話すまでもなく、資金繰りが窮屈となり、やがて資金ショートし破綻してしまう。簡単に私の場合の経緯はこのようなことになる。建設不況の中、足元の経営基盤を強めることなく、売り上げ拡大に走った結果の経営破綻であった。

私の友人の会社、私の顧問先の会社とは真反対な経営戦略を取っての失敗だった。私はどの顧問先にも私の失敗談はいつも聞いてもらっている。これもその一つ。会社は大きければいいというものではない。

自社の足元の経営基盤をしっかりと堅固にしていくこと、そして地域に根差した経営を基本とすること、そのうえで拡大策、発展策を考えて欲しい。そう、若い後継者に話している。「最大の会社を目指さず、最良の会社を目指す」本当にいい言葉だと思う。

 

 

 

 

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