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自社の駄目なところを直そうとする愚

SPECIAL

キラーサービス(特別対応の標準化)コンサルタント

株式会社キラーサービス研究所

代表取締役 

経営革新コンサルタント。イレギュラー対応を標準化することで、ライバル不在で儲かる、「特別ビジネス」をつくりあげる専門家。倒産状態に陥った企業の経営再建から、成長企業の新規事業立ち上げまで、様々なステージにある数多くの企業を支援。イレギュラー対応を仕組みで廻して独自の市場をつくりだす画期的手法に、多くの経営者から絶大な評価を集める注目のコンサルタント。

「うちはとにかくやるべきことが多すぎて、これ以上新しいことをやる余裕はないんですよ……」 ―― 先日スポットコンサルティングにお越しになった社長が、ため息をつきながらおっしゃった言葉です。

「営業の方はターゲットの見直しをやっているところです。あとマーケティングも少し手を広げようかと検討しています。あとやっているのは製造工程の見直しですね。ロスの低減が狙いです。あとは……」と、いま走っている打ち手がずらずら出てきます。

「それらを全部やっても会社が良くなる気がしないと……?」こちらが先回りしてそうお聞きすると、社長は「いや、その通りなんです」と肩を落とされました。


 

社長は当然ながら社内のいろんなところが気になります。社長の頭の中にある理想的な仕事の進め方と、現実に社員がやっている仕事ぶりとの間にギャップがあるため、目についたところから「あれを直せ」「これを直せ」といいたくなります。

しかしながら、いくら自社の「短所」を片っ端から直していっても、事業が強くなることはありません。なぜなら、このような「部分最適化」を積み上げたところで「全体最適化」にはつながらないからです。

これは「人の魅力」というものを考えるとイメージがわくと思います。「魅力がある人=短所がない人」ということではないでしょう。いろんな悪いところを直していけば人の魅力が増すわけではありません。人を惹きつけてやまない人というのは、なにか一点において、他の人にはない突出した特徴を持つ人ではないでしょうか。

これは事業においてもそのまま当てはまります。特に短所がなく、仕事をちゃんとこなせてさえいれば、それで自社の事業が強くなる、魅力的になるということでは決してないということです。

こう書くと当たり前のことのように思えます。しかし実際は、やはり社内のいろいろなことが気になり、できていないところを片っ端から直していこうと手をつける経営者が非常に多いのです。

これは別の言い方をすると、事業を戦略レベルで考えずに、戦術ばかりに手をつけているということです。

これも言うまでもないことですが、戦術は戦略があってはじめて決まります。戦略から導かれていない打ち手は戦術でもなんでもなく、敢えて表現すれば「ただ動いているだけ」ということです。これでは冒頭の社長のように、会社が良くなるという実感を持てるはずもありません。

しかし、これまで関わらせていただいた企業においても、初回のご相談時にきちんと自社の戦略を説明できた方は非常に少ないというのが実態です。

ではなぜ多くの企業で戦略不在の状態に陥ってしまうのか?

それは、ひとえに「ゴールからの逆算」ができていないからです。

ゴールと言うのは言い換えると「自社のあるべき姿」です。まず出発点として、この自社が目指すべき姿を描けていないため、会社がどこに進んだらいいのかが見えずに自分たちが本当に何をすべきかがわからない…ということになるのです。

こういう会社は総じて社員のモチベーションも高くありません。なぜなら、自分たちのあるべき姿が見えていないということは、その姿と現状とのギャップもイメージできないため、自分たちは現状でもそこそこイケてると思ってしまうからです。

ではなぜ自社の目指す姿が見えないのか。それは、逆説的ですが「自社のことばかり見ているから」ということです。自社の良くないところを直すことに注力しているため、視点が内向きになり、全体が見えなくなるのです。

全体と言うのは言うまでもなく「市場」のことです。自社の状況は一旦横に置いておき、まずはとにかく市場を見ていくことです。

  • 顧客は本当は何に困っているのか?
  • 競合それに気づいているのか? 彼らは何をやっていて、何をやれていないのか?
  • この市場に欠けているものは何なのか? 何が見落とされているのか?

このように「自社の外側」に目を向けていけば、自ずと「自社のあるべき姿」も見えてくるはずです。

そのような自社が目指すべきゴールが設定できたなら、あとはいつまでにそこにたどり着くかを決めて、そこから逆算で打ち手を設定するだけです。

ここで大事なことはスピードです。いかにそのゴールに早く到着できるかです。ゆっくりやればやるほど、顧客の心は離れ、競合には猶予を与え、自社の社員の気が緩みます。ビジネスはゆっくりやればやるほど難しくなるのです。

ではゴール到達までのスピードをどうしたら速めることができるのか? その答えは単純です。「戦略とは捨てること」―― つまり、無駄なことをやらないことです。無駄なことをやればやるほど会社は違う方向に進んでいきます。戦略に紐づいていない打ち手は捨てていかなければなりません。

そしてこれは社長の仕事です。社長が切断力を発揮してやるべきことを絞っていかなければ、社員の仕事はどんどん広範囲に広がっていきます。これは物理学でいうエントロピー増大の法則です。物事は放っておけば乱雑な方向に進むのです。

御社の「あるべき姿」は明確ですか?
 最速でそれを目指す体制は整っていますか?

御社のゴール達成を待ち望んでいるのは、御社のお客様です。

 

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