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ヒットを導く「問い」の起て方

SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

株式会社りぼんコンサルティング

代表取締役 

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

日経トレンディなどで発表された今年(2019年)のスイーツ系ヒット商品に「タピオカドリンク」「バスク風チーズケーキ(通称:バスチー)」があります。一方、和スイーツには、ここ数年で目立ったヒット商品がありません。顕著なのが、生活者の和菓子離れです。

わたくしが洋菓子メーカーに在職していた2000年当時、超高齢化時代に向けてケーキサイズのミニマム化を検討していました。当時は「高齢化によって嗜好の変化が起こり、洋菓子から和菓子へとお客様が移る」という市場予測データが出ていたため、顧客流出を防ぐための施策のひとつとしてミドルサイズケーキを進めていました。ところが20年経過した今、超高齢かと少子化の状況は改善されることもなく、急速な人口減少を背景に、ほとんどのビジネスでインバウンド需要頼みの現状です。そして今、和菓子、洋菓子メーカーともに廃業が目立っています。

先日ご相談にいらした和菓子店経営者は、ある相談機関で、「和菓子屋さんの強みは季節感だから、ハロウィン商品やクリスマス商品などの季節商品を作りましょう」。そう士業の先生に提案されました。さらに「顧客ニーズやベネフィットから商品企画しましょう」とアドバイスされ、胸の中でモヤモヤがとまらない、ということです。時代が大きく変化している今もなお、教科書通りのマーケティング論に則ってアドバイスをしている相談機関があります。しかし、日々変化するビジネスの現場は、切った張ったの泥臭い世界です。残念なことですが、標準化された教科書で「商売」は繁昌しませんし、一般論で「商品力」を高めることは絶対にできません。

その理由は「時代が変わった」からです。わたしたちは今、第4次産業革命に直面し、その渦中で生きています。その途上において商売していることを、強く認識しなければなりません。今必要なのは、「教科書」が唱えることとは何の関係もない、変革時代における「自社独自の書」です。そして、先生たちが思わず「意味不明」と顔を背けてしまうような、 壮大な“問い”を立てる力こそが必要不可欠です。それは、教科書通りに勉強し、「答えを待つ」こととはまったく逆の姿勢です。

SNSやマスメディアからさまざまなニュースが流れてきます。世界では、1人の医師が異国で志半ばで命をおとしました。1人の少女が環境問題で世界の大人たちに責任ある行動を問うています。日常の半径10メーターの世界であっても、たった1人のお客さまの周りには家族や仲間や同僚がいます。いろいろな場所で、ネットを経由していろいろな人と関わりながら、頭で考えながら、心で感じながら生活しています。

あらためて問います。わたくしたちと同じように、お客さまもまた1人の人間です。では、人は何のために生きているのでしょうか? 壮大すぎる、というのであれば商売に結びつけた言葉に変換しましょう。では、人はなんのために動くのでしょうか? 人はなんのために行動するのでしょうか? わたしたちは、自分の「不満」や「不快」を解決するために、あるいは自分の「便益」のために、生きているのでしょうか? そして、わたしたちは今「不満」や「不快」を晴らすことに一生懸命でしょうか? その「不満」や「不快」を、そもそも晴らしたいと思っているのでしょうか?  どうでしょうか?

ご存知のようにIT・モバイル革命で暮らしの価値観ががらりと変わりました。いつでも、どこでもスマートフォンを介して世界中の人と交流することができるようになりました。スマートスピーカーが生活をアシストし、スマートウォッチがわたしたちの健康を監視しています。ネット中心のライフスタイルで、核家族化さえも「商品やサービス」でシェアし、補うことができるようになっています。働き方も変化しています。そして何より、自然災害や犯罪に巻き込まれることなく、お家で買物ができ、お家キャンプをし、お家レストランを楽しんでいます。

“家”という安全な“繭=城”のなかで、ひとりひとりがキングやクイーンになって君臨しています。キングやクイーンは繭の中で暮らし、遊び、ときどき働くライフスタイルです。キングやクイーンが、こうした暮らしの中で何を求めているのでしょうか? スマートフォンに向かい、指先で次々とニーズやベネフィットを満たすことができる今、彼らが求める世界は何でしょうか?

再び、和菓子店の世界に戻りましょう。A社もB社もC社も、秋には秋らしい、クリスマスシーズンには華やかな季節感あふれる「煉きり」や「どら焼き」を作っています。それが強みであり、魅力なのでしょうか? 繭の中で退屈しているキングあるいはクイーンが、それを見た時、どう感じるのでしょうか? 自社の存在意義は、お客様のニーズを満たすことでしょうか?

わたしたちはだれしも合理性で買物をしているわけではありません。大人のアタマで計算し、子供のココロで感動します。アタマとココロのシーソーゲームをし、常に葛藤しながら生活しています。自社の商品サービスは、そんなお客さまに何を伝え、何を訴え求めるのでしょうか。そして、何をして差しあげたいのでしょうか? どうでしょうか?

自社の存在意義は、お客さまの心に新しいニーズを生み出すことではないでしょうか。お客さまを新しい世界へ連れて行くことではないでしょうか。自ら新しい世界観を打ち出し、打ち出した世界観にお客さまを巻き込んでいくことではないでしょうか。「これ素敵ですよ、いいですよ! 」「こんな世界知っていますか? 」という、新たな世界観を提示する努力をされていますでしょうか。お客さまが、新しい生き方やライフスタイルに触れることができる商品サービスを生み出す努力をされていますでしょうか。

商品リニューアルとは、昨日までの自社の世界観を更新し、新たな世界観をお客様に打ち出すことです。ライバルは、昨日までの自社です。いよいよ2020年を迎えます。新しい一年に向かって、自社を更新してゆきましょう。 

 

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