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やり方次第で激変するWEB会議の満足度(運営ノウハウ編)

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

前回のコラム「やり方次第で激変するWEB会議の満足度(環境編)の続きです。新型コロナの時代になるかなり前から「鈴木さんとのWEB会議って凄く自然ですね」といくつかお褒めの言葉を頂いていました。思い返せば7年近く前に起業した頃からずっとWEB会議の品質には拘ってきたのでそれなりの自負はありましたが、WEB会議のビギナーが大量に発生し、変に偏った「WEB会議指南書」の様なコンテンツも多数流れている現状もありますので、今回は皆さんにだけ少し実務寄りの話をしたいと思います。

いくつもの失敗を経て体得したノウハウがあるのですが、今回は「運営ノウハウ編」です。機材や環境をちゃんとしても、使い方次第でミーティングのアウトプットが全然違うというお話…

前回は、環境面で必須の3要素を説明しました。

  • 充分高速で安定したネットワーク
  • 高品位な映像作り
  • 高品位な音声

これらが揃っている前提で、運営をどうすれば良いのか?そのキモは、以下の3要素です。

  • アジェンダが合意できていないと致命的
  • 会議中、迷宮に入らない為の「イマココ」
  • リアル会議よりも大切な「まとめ」

何やらよくわからない、と言われるものもあるかもしれませんが、一つ一つ解説します。 

・アジェンダの重要性

WEB会議に限らず、会議というものにはそもそもアジェンダ(議題)があります。「何かを決める」ことが議題であるはずです。そもそも日本の会社で良く見かける「議題の無い・不明瞭な会議」は、ただの時間つぶしであり撲滅するべきものです。いまどきビジネスシーンにおける「報告会議」などは、特殊な事例を除き無用の長物ですし、文書や写真・動画の共有で充分です。

アジェンダの無いリアルな会議の場合、参加者の中に“協力者”が居れば、主催者と協力して議論を建設的な方向に持って行くことができる可能性を秘めています。ところがWEB会議の場合その“協力者”が現れにくいのです。心理学的なことは私にはわかりませんが、WEB会議を数回経験したことがある方の中には「なぜ、こんなに発言が少ないのだろうか?」と悩んだことがある人がいらっしゃると思います。これが“協力者”が現れない理由です。

WEB会議の場合、積極的な発言を促さないことには、会話が成立しない場合が多いので、リアルなら出現してくれる協力者が沈黙してしまいやすいのです。それがゆえに、議長である会議主催者は「漫然とした議論を徹底的に避ける工夫が必要」なのです。そのためには「今回はこれを決めないとダメ」という強い意志を背景に持つアジェンダを設定し、それを会議の冒頭に全参加者で合意しておかなければなりません。

更に、「アジェンダに無い議論」は、いくら議論の必要があるといえども、当該WEB会議で議論するべきではありません。他のWEB会議を設定したり、メールやチャットでの議論の場に先送りするべきだと思います。そうでないと・・・議論の発散を招き、何も決められないうちに時間切れ、という会議主催者の汚点を残すことになります。 

・迷宮に入らない為の「イマココ」

リアルの会議でも、配布資料も画面表示も何も無く、話だけに終始する会議を見かけます。これもそもそもダメなので、このような会議は撲滅したいところではありますが、WEB会議の場合この弊害は如実に表れます。

まず、「今なんの話をしてるんでしたっけ?」という素っ頓狂な質問をする出席者が現れたら、それはレッドゾーンの印です。これはリアルもWEBも両方に言えることですが、少なくとも「現在これについて話をしていて、発言されたキーワードはこれで・・・」という会議進行用のメモ(議事録ではありません)をリアルタイムに共有する必要があるのです。

リアルの会議の場合にはホワイトボードやPCのメモを共有する手段があります。よくPCの画面をホワイトボード代わりに使う主催者を見かけますが、うまくメモしないと失敗する可能性があります。残念なことにPCの1画面に表示できる情報量の限界は、ホワイトボード1面に手書きで書ける情報よりもかなり少ないからです。キーボードで打ち込むメモは、例えば

 お客様の65%がこの商品の仕様に満足していると答えている

と書くでしょう。キー入力が早い人はもっと細かく書くかもしれませんね。これを20行も書いていれば画面スクロールしてしまい、メモを俯瞰的に見ることはできません。一方で同じことをホワイトボードに書くと、

  65% ○

で済みますし、横方向・縦方向自在に書き足せ、文字の大小や簡単な絵も描けます。私の経験ではホワイトボードに乱雑に書いた方がPCに整然とテキスト入力するよりも、情報量としては数倍多いケースがざらです。

そして、WEB会議の場合は空気感が読めないので、迷子になる人が増えがちです。私の経験ではWEB会議でホワイトボードを画面共有し、そこに手書きで書いていく手法は、参加者の意識ベクトルを合わせ続けることに大きく効果があると考えています。ホワイトボード無しに議論を進めるのは空虚であると言わざるを得ないでしょう。

これをWEB会議でも活用すれば「今なんの話でしたっけ・・・」的な人の出現をかなり少なくすることができるはずです。

 ・リアル会議よりも大切な「まとめ」

リアル会議でもまとめをしない主催者がいるので、その都度フラストレーションを抱える方も多いでしょう。少なくとも「何かの目的があって会議をしているので、その目的をどのように達成できたか、参加者が合意しなければならない」のは絶対条件です。

リアル会議であれば参加者の記憶に残りやすいので、「こんな感じの結論だったはず」という共有認識ができあがる可能性が比較的高いですが、さらっと通過してしまいがちなWEB会議の場合はそれは期待できません。従ってリアル会議よりもさらに「まとめ」が必要なのです。これが無く終わってしまうWEB会議はただの時間の無駄と断じても良いでしょう。

 前回は「良い環境を整えないと良いWEB会議はできない」という議論でしたが、それを整備する前提で今回は運営方法について解説しました。これ以外にも、WEB会議を上手に進める方法はあると思いますが、少なくとも「うまい照明や映像・音声が実現できれば大丈夫」ということはありません。

良く「参加者の表情を明るく見せる女優ライトは必須だ」といったうんちくを耳にしますが、少なくとも社内や関係者によるWEB会議にそれは必要ではありません。必要最低限に参加者全員が満足できる環境を整備し、参加者全員がクリエイティブに頭を働かせるための運営方法が実際のビジネスシーンには必須なWEB会議の条件です。これらはアフターコロナ時代の必須スキルになることでしょう。

ビフォーコロナの時代にはもう戻りたくない、という声が聞こえるようになるぐらいまでWEB会議の環境とスキルを磨き上げたいものですね。

 

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