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テスラのようになれるとしたら

SPECIAL

環境戦略コンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

環境戦略アドバイザー。数々の多国間環境条約や、国連が提唱する2030年のための持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)を参照しながら、サーキュラーエコノミーなど企業として取るべき環境戦略や、環境対策を通じた長期収益構造の改善などをアドバイスしている。

わが日本が世界に誇るトヨタは年間で約1千万台の自動車を生産しています。昨年5年ぶりに自動車生産台数で世界一の座に返り咲いたというニュースも記憶に新しいところだと思います。しかし昨年はまた、米国のテスラが時価総額でトヨタを上回ったというニュースもありましたね。ところがテスラは年間でたかだか40万台くらいしかクルマを作っていません。それでどうしてこんなに株価が上がるのか?考えてみれば不思議な話だと思います。

その理由は、資産運用に関する投資家の判断基準にあります。自動車に対するさまざまなニーズにどれだけ応えているか、燃費だったり価格だったり故障しにくいことだったり運転しやすくカッコよいことだったり、様々な視点でトヨタは市場要求に応えています。

でも、テスラはちょっと違います。環境だったり自動運転だったり、静粛性や居住性、いわばモビリティの明日を具現化しようとする努力を可視化する、より先進的なビジョンを提供している会社と言えるでしょう(トヨタの関係者様、失礼いたします。あくまで市場の評価を考察すると、という意味です)。

その会社の株がこれほどまでの高値を付けたことにはいくつかの理由が考えられます。一つには、「カーボンニュートラル2050」に代表されるように、世界中の政府がこの先30年にわたる気候変動への取り組みを国是と認めたことがあります。これによって、テスラのビジネスは世界中の政府からお墨付きをもらえる立場になりました(ごく最近、中国軍がテスラ車の使用を禁止したというニュースはありましたが)。

これによってテスラが市場から「口先だけで実態が伴わない」、という疑念を持たれる可能性は劇的に小さくなったと言えます。でも、それだけが株高の原因ではありません。

今ひとつにはコロナ禍による財政出動で市場にキャッシュが溢れたことがあると言えます。当然ですが、キャッシュはよりよい運用先を求めて市場を行ったり来たりします。市場全体が熱を帯び、平均株価も史上最高値を付けたことは記憶に新しいところだと思います。

加えて「ステークホルダー資本主義」の考え方が次第に浸透してきていることも無縁とは言えないと思われます。社会に価値を提供することを通じて、様々なステークホルダーの負託に応えるのが企業の務めである。この考え方によりフィットする投資先としてテスラが選好された要素は小さくないと思います。

「ステークホルダー資本主義」への適応は、必ずしも株主価値の最大化のみを使命としないという考え方と合わせ、長期的に言えばこれまでの「株主資本主義」との決別を意味する意思決定でもあると言えます。そして市場はそれを評価した、というわけです。

テスラの真似をすれば誰もがテスラのようになれるというわけではありません。しかし、長期を見据えた戦略を考えるうえで、参照できる一つのモデルとしてテスラの果たした役割は小さくないのです。

他社にできない中身やアイディアで、ステークホルダーの希求する未来を届けること。市場や金融機関がそれを評価してくれるようになるのは、そう遠いことではありません。またそうすることで、環境、特に気候変動分野では政府によるリスクヘッジをも期待できる流れにあるのです。

まずはステークホルダーへ向けた積極的な情報発信を心掛けてください。社会課題の解決に邁進する会社を、当社は全力で応援いたします。

 

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