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納品ミスの発生は業務プロセスが非合理な証

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

先日当社で耐久消費財を購入したのですが、その際に納品ミスがありました。有料で付けたオプションが付いておらず、かつ、納品書のオプション確認欄にチェックの印までしてあったのです。本来は顧客立ち会いの下、選択されたものがきちんと装着されており、機能しているかを一点ずつ確認して納品書のチェック欄に印をしてゆくのが決まりのようですが、そのプロセスを全部飛ばして担当者が片っ端からチェックを付けた、という闇運用をしたようです。

納品されて二日目に取り付けられていないことに気がつき、すぐに営業窓口に連絡したところ、ミスに気がついた様でお詫びの電話が来ました。当然、直ちに改修の段取りを組んでもらって5日後には無事取付て頂いたわけですが、後日談が続きます。

納品して一週間後に、営業支店長から購入のお礼の電話が来ました。納品ミスのお詫びがあるのかとおもいきや、購入のお礼の言葉と商品の調子のことしか聞きません。いずれ言及があるだろうと思って相づちをうっていたところ、「他に何かありましたら遠慮無くご連絡ください」という通話を切る際の言葉が出てきてしまったので、仕方無くこちらから納品ミスの話を振ってみました。驚いたことに、店長はミスの報告を受けていなかった様です。電話口でうろたえる様子が手に取るようにわかりました。

つまり、少し分析するとこの営業所では以下の5つの問題が同時発生したことになります。

・納品時のチェックを省略する「ごまかし=無断業務省略」が日常化している

・必要なオプション部品は支店に集結していたのに、「余ったので倉庫に返品」してしまった

・無断業務省略を発見・是正したり発生を牽制する為のチェック機能が無い

・ミスが発生した際の上長報告がでてきていない(悪く言えば握りつぶし)

・ミスの履歴を管理する仕組みが無い

日本の昔ながらの会社では、「社員はみんな家族同然・なんでも相談することができる組織風土・ミスが起きない様にみんなでフォローし合う」といった人間係の相互依存で組織全体としてミスがない様に工夫してきましたが、経済のグローバル化と雇用関係の変化、人間の意識の変化によって、このような「ヒトの関係性によるミスの防止や組織発展」は組織の理想像ではなくなり、代わりに欧米的な「割り切った人間関係と定められた業務」によって組織を維持発展させなければならない時代になりました。

しかし、「定められた業務」という業務の標準化の点できちんと対応できない会社組織が激増していることは事実です。「標準化が合理的なもので、かつ、徹底されている」という状態にならない場合、効率化どころかミスの発生も防止できません。この営業所にはちょくちょく行きますので、見た限りでは社員が笑顔でいきいきと対応している「かのように」見えました。社員関係は古き良き日本の会社といった風情でしたが、業務の標準化については内情が全然違うのかもしれません。

きちんと合理的な業務プロセスが徹底されている組織であれば、納品ミスの発生はほとんどあり得ない業務プロセスと手続きになっているはずです。そこまで業務が整理できていなかったとしても、余ってしまった部品に気がついていながら、何もアクションをとらなかった現場もおかしいですね。つまり、この営業支店では支店長も、営業担当者も、現場担当者も横の連携をとっていない、お互いが知らんふりをしている、それでも許されている、という実態が垣間見えます。つまり「業務がシステマチックになっていない・合理的なものになっていない」と言えます。多少なりとも合理的な業務プロセスになっているのであれば、

(1)支店長はミスの発生の報告を受け、直ちに顧客にお詫びを入れる

(2)同時に、ミスの発生の根本的原因を明確化し、その対策を計画して仕組みの改善に繋げる

(3)その事例を本社や他の営業支店に横方向で展開し、会社としての改善に結びつける

といったアクションをとられているはずです。言い方を変えれば、このような初歩的ミスが発生するということは、業務プロセスが合理的なものになっていない、もしくは定められていない、ミスを次プロセスで発見して是正できるような手順になっていない、業務プロセスを支援し間違いない遂行ができるシステムが導入されていない、ということを教えてくれる証拠です。要するに今回発生した事象はこの営業支店にとって「プロセスを改善しなければならない合図」なのです。

支店長がそれに気がついて業務プロセスの改革に舵をとるかどうか、これは今後注目して見守りたいと思っています。

 

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