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なぜ発生するのか?業務の属人性

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

組織の仕事をデジタル化するためには、どうしても業務の可視化が避けられません。このことは、本コラムでも何回か話題にしていますし、私の新著「会社を正しくデジタル化する方法」でも詳しく取り上げています。可視化を行うことで業務のボトルネックがわかりますし、経営課題や現場の課題が解決できない理由もわかります。さらに、属人化してしまい容易に負担を軽減できない業務とその担当者も明確化されます。しかしそこで大きな疑問が生まれます。「そもそもなぜ業務は属人化してしまうのか?」です。

この命題について、明確な答えを出している人を私は見たことがありませんが、私の経験で裏付けされている事実は以下の3パターンです。

パターン1:その仕事を割り当てられた人が極端に少ないため、その人の中だけで業務が複雑化・高度化してしまう

パターン2:その仕事の「スペシャリスト」にならないと、組織の中で自分のアイデンティティを確立できないため、他の人が手を出せないようにしてしまう

パターン3:経営層がその仕事に全く関心がなく、「あのひとにやらせておけば良い」としか認識していない

これら3パターンは、どれもシステムの問題ではありません。人材管理、経営の問題です。中小企業でこれらが発生している場合には、極論すればすべて社長の責任です。ところが、それを自分ごととして正しく認識できている社長は非常に少ない、というかほぼ居ません。それでも会社経営面で問題なければ良いのでしょうが、これをそのままにした状態でデジタル化はできないので、デジタル化する際の大きなハードルとなってしまい、そうなるまで放置されてしまうわけです。

更にこれらの問題の根が深いのは、「人を新たに採用して属人性のボトルネックを解消しようとしたときに失敗する」ことです。特にパターン1と2の場合、非常に優秀な人材を採用できたとしても元々の社員に「新人参入への抵抗感」があるため、メンタルの問題を引き起こしがちです。パターン3であってもすぐに1や2に移行してしまいますので、新人を容易に受け入れるような土壌にはなりません。社長には気の毒ですが、「新人を採用してもすぐ辞めてしまう」ことの繰り返しになることは火を見るよりも明らかです。

こうなってしまうと、処遇を上げても容易に解決できず、会社の成長を阻害する大きな要因となってしまいます。しかもこれら属人化した業務のことを担当者にいくら説明してもらっても、社長はそれを理解できません。社長と現場担当者の仲も悪化する要因になりかねないのです。

この状態に至ると、社長からご相談があっても差別用語を使って担当者のことを悪く言うケースが出てきます。これは会社にも社長にも当の担当者にとっても不幸な状態です。第三者が入ってうまく整理していかないと解決できるものではありません。こんな状態になっている会社が経営者事業承継をしようとすると、思わぬ大きなハードルになることも起こり得ます。

製造業であれば、その会社を代表する技術や、製品の性能を研ぎ澄まされたものにするのに、社長は必至になることは当然ですが、主柱業務ではない例えば事務仕事などを長い間無視し続けるとこのようなしっぺ返しにあいますので、社長にはバランス感覚を持った目で社内を見る能力と努力が必要になります。なかなか難しいことではあると思いますが、ジョブ型雇用の要素も取り入れながら、「社長の目配りが甘かったが故の業務属人化」は絶対に起こしてはならないことなのです。

属人化を解決するにはとても大きなエネルギーや投資が必要になってしまいます。ぜひそんなことにならないよう、日頃から目配りと配慮を絶やさず、来るべきデジタル化の際にスムーズに業務を合理化できる環境を作るようにしましょう。

 

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