オーナーシップを発揮する

親子経営企業の強みを活かすことでどのようなことができるのか、またやるべきなのか、具体的にお話させていただく。
全部で5つの話をしようと思う。
今日はその第一話。
【オーナーシップを発揮する】
ここで私が言うオーナーシップとは、文字通り企業の株主であるオーナーが、企業の所有者として、その役割と責任を、経営者としてしっかりと発揮することだ。
創業者に結構多い話をさせてもらう。起業した会社が順調に成長、発展し企業としての規模が大きくなってくると、当然のこととして組織ができ、組織としての動きが始まる。そして、経営者には、気がつくと組織のトップとして一定の役割ができていることになる。
業績が順調であれば役員、社員に任せてもなんら問題がなく推移する。そんな状況が長く続くと、いつしか経営者は彼らに任せておけば大丈夫だと考えてしまう。毎日、経営者が会社へ行ってもこれといってやることがなく、いつしか社長室にこもってしまうことになる。
そんな好況がいつまでも続くはずがなく、やがて業績に陰りができる。さらに状況が悪化し始め、危機的状況になりつつある。
そんなとき、経営者が言う。
「彼ら役員たちに任せてるから」
「いまさら私が口出しすることはどうかな」
実際、私のコンサルティング現場で幾度かある話だ。私がいつお伺いしても必ず社長は在社、しかも朝に社長室に入ったまま出ることが無いという。昼飯時になると、社員の誰よりも早く社長室を出、行きつけのお店に出かける。
その会社は、業績が数年停滞気味で売り上げが右下がりになりつつある状況だった。さすがに気になるのか、ここ最近は社長室に役員や社員を呼びつけているようだ。なにか指示をしているのかと思えば、ただどうなってるのかと問い詰めているだけのようだった。
私がたまらず、「社長、久しぶりにご自身が現場に出てみられてはいかがでしょう。社長室にいてやきもきするのでなく、実際に見てご判断をされてはいかがでしょう」と申し上げた。すると、「そうも思うんやけどな。ずっと役員、社員に任せてるから。今更俺が出ていってもな」とのこと。
この会社は創業者が起業して30数年になる。創業から順調に業績を伸ばし、会社の規模も大きくなっている。ただ、どの会社の事業も経年劣化が起きることは避けられない。この会社も創業30年を迎えた辺りから業績が停滞している。
ここ数年は売り上げが徐々に右下がりとなり、なにがしかの手を打たねば危機的状況に落ち入ることになる。そんな状況下にありながら、社長は自ら動こうとせず、役員、社員に任せているからと言うのだ。
信じられないと思うだろうが、こういう社長は結構いる。経営者自らが創り上げてきたビジネスモデルが行き詰まりを見せている。生半可な改変、改良ではもはや手遅れかもしれない。経営者自らが今一度、立ち上がって取り組むしかない。
親子経営企業の経営者は規模の大きさに関係なくほとんどが大株主であり、その会社のオーナーである。危機的状況にある時にこそ、オーナーとしての役割と責任を経営者として存分に発揮する必要がある。
ここ最近の口癖である「社員みんなに任せているから」はもう止めてもらいたい。会社の所有者として、経営者がここ一番の動きと働きをして欲しいと思う。
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