経営者の出処進退と覚悟が問われる

今日は親子経営企業の強みを活かし、その真価を発揮すればどのようなことができるのか。
第5話。
【後継者を計画的に育成し、スムーズな事業承継を実現する】
親子経営企業で親から子へ経営交代(事業承継)をするとき、上手くいく会社と、上手くいかない会社がある。何故そうなるのかを考えてみたい。こういうときは、上手くいかない会社の話をすることになる。
上手くいかない会社の原因、理由が分かれば自ずと上手くいく会社の姿が見えてくる。経営交代には、継がせる側の父親と継ぐ側の子息、息女のふたりの主役が登場する。まずは、継がせようとする父親について考えてみよう。
長年、経営者として生きてきた父親は自分の年齢がそろそろ気にかかり始めている。自分はこの先、幾つになるまで経営を続けるのか迷っている。自分の年齢も気になるが、後継者の年齢も気にかかっている。
結論をまず言おう。親から子への経営交代が上手くいかない、上手く進まない会社の原因は、継がせようとする側の父親の出処進退が明らかにされていないことが、まずあげられる。さらに、出処進退を明らかにしているものの、継がせる父親の覚悟ができていないことが、最も重大な原因だと言える。
そもそも、事業承継は経営者が出処進退を明らかにすることから始まる。経営者が辞めると言わない限り、事業承継は始まらない。経営者の父親が70代になり、後継者の息子が40代になっているにも関わらず、父親が一向に引退する気配がまるでない、という会社の話は多くある。
なかには、経営者が80代、後継者が50代という会社も結構あるものだ。80代の経営者が50代の後継者をつかまえ、「お前、いくつになったらしっかりするのや」と日々文句を言ってる、などということが聞こえてくる。
一方で、50代の後継者は日々、「うちの親父はいったいいつまで社長をしてる気なのか」と言いたいのを我慢している。口に出そうものなら、気が短い80代の父親が烈火のごとく怒りだし、周りにまで迷惑をかけてしまうのだ。
中小企業が多い親子経営企業では、父親がほとんどの株式を持っている。なかには100%オーナーであることも多い。そんなオーナー経営者を誰も辞めさせることなどできるわけがない。経営者自身が自分で決めるしかないのだ。
故に、事業承継は経営者が自らの出処進退を明らかにしてもらわなければ進めようがない。それがあって初めて事業承継の一歩を踏み出せることになる。そして、ここからさらに、経営者である父親にやってもらわなければならないことがある。
それが、経営を譲ろうとする者の覚悟だ。なぜ覚悟が必要なのか。長年、経営者として生きてきた父親が経営から身を引くことで、失うもの、無くなるものがあることに気づくことで、進めてきた事業承継の動きを止めようとすることがある。
また、動きを止めることまではしないが、自分の引退後のイメージができず不安になり、疑心暗鬼になることがある。そうなると、積極的に事業承継を進めようとしなくなり、遅々として進まなくなったり、大幅に見直されたりすることがある。
では、継がせようとする者の覚悟とはどのようなものなのだろうか。具体的にお話しする。まずは、「経営権を渡す覚悟」がある。後継者に経営を譲るということは、まさに経営権を渡すということになる。その喪失感は大きい。
次に、「権威・権力・特権・ステータスを失くす覚悟」が必要。長年経営者であったことで、社外でいろいろな立場があったことだろう。例えば、地元の商工会、商工会議所の要職に就いていたり、ライオンズ、ロータリークラブなどのメンバーであったりするだろう。
経営者から身を引くことで、それらの要職、役職などからも身を引くことがあるだろう。いわゆる地元の名士ということで、得ていた権威・権力・特権・ステータスなどが無くなることでの喪失感を抱くことになる。
また、「仕事での喜び、意義を失くす覚悟」が必要。経営の第一線から身を引くことは思っている以上にいろいろな喪失感を抱かせる。仕事一筋に生きてきた経営者ならさらのことだろう。
さらに、失う、無くすことへの覚悟だけではなく、「後継者を見守り、育てる覚悟」が求められることになる。後継者を自ら育てるということでなく、どのような体制で、どのような計画で後継者を育てるか準備しておく必要がある。あくまでも辛抱強く見守ることが大事だ。
最後に、「新たな人生を歩む覚悟」をして欲しい。経営の第一線から身を引いたとしても、経営者の人生はまだまだ続く。自由な身となり、何をやってもいいわけだから、是非とも前向きに積極的にこれからの人生計画を立てていただきたい。
以上が経営を譲ろうとする経営者である父親にしていただきたい覚悟である。経営者がご自分の出処進退を明らかにし、これらの継がせようとする者の覚悟をしてもらえたなら、その会社の事業承継が上手くいく確率が大きくなる。
実は、同じように経営を継ぐ者の覚悟も必要である。経営者と後継者、双方の覚悟が当然必要不可欠である。それがあって初めて、後継者の育成が上手く進み、事業承継がスムーズに行われることになる。
後継者の継ぐ者としての覚悟については、またいずれかの機会でお話ししたい。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。

