透明資産経営|なぜ同じ商品でも売れる店と売れない店があるのか?
透明資産 勝田耕司 SPECIAL

社内に「感じいい空気」を意図してつくりだし、業績を躍進させる「透明資産経営」指導のコンサルタント。大学卒業後、1993年キリンビールに入社。東名阪で飲食店向け営業を担当し、延べ2千店以上へ課題解決提案を実践。在籍17年間で社長賞を4度受賞、同社最速で部長昇格。新聞・雑誌・TV・ラジオでも多数取材される。
2011年12月、株式会社ホスピタソンを設立、代表取締役に就任。「世界中の企業に透明資産を」というビジョンを掲げ、企業の「空気感」をおカネに変える専門家として活動中。

ー売上を左右する「店の空気」という資産
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
飲食業界を見ていると、不思議な現象に出会うことがあります。同じような商品、似たような価格、似たような立地条件にもかかわらず、ある店には人が集まり、別の店にはなかなか人が入らないという現象です。味や価格だけでは説明できない差が存在します。この差を生み出している重要な要素の一つが、店に流れている「空気」です。
東京・池袋のラーメン店「無敵家」は、その典型的な例として知られています。昼どきになると店の前には長い行列ができ、海外からの観光客も含め多くの人が訪れます。もちろんラーメンの味が評価されていることは間違いありません。しかし、実際に店に入ると、それ以上に印象的なのは店内の活気です。スタッフの声が店内に響き、客席と厨房の距離が近く、店全体に一体感があります。初めて訪れたお客様でも、その空気を感じた瞬間に「ここは良い店だ」と直感するのです。
人間の感覚は、想像以上に環境の影響を受けています。行動経済学者ダニエル・カーネマンは著書『ファスト&スロー』の中で、人間の判断の多くが直感的なシステムによって行われていると説明しています。つまり、人は論理的に考える前に、まず空気や雰囲気で価値を判断しているのです。
飲食店に入った瞬間の印象を思い出してみてください。スタッフの表情、店内の音、客席の距離感、他のお客様の様子。それらを一瞬で感じ取り、その店が心地よい場所かどうかを判断しています。味を確認する前から、その店の価値を無意識に決めているのです。
大阪・道頓堀の「今井本店」でも、この空気の力を感じることができます。うどんの名店として知られるこの店は、創業以来長い歴史を持っています。店内に入ると、スタッフの落ち着いた接客と静かな雰囲気が広がり、自然と会話の声も落ち着きます。この空間に入ることで、お客様の体験そのものが特別なものになります。料理の味はもちろんですが、その空気がブランド価値を支えているのです。
このような現象は飲食店だけに限りません。小売業でも同じことが起きています。京都の「一澤信三郎帆布」は、帆布のバッグ専門店として全国的に知られています。店内は決して広くありませんが、商品が整然と並び、スタッフは丁寧に商品の説明をしてくれます。大量の広告を打つわけではありませんが、店の空気そのものがブランドを支え、多くのファンを生み出しています。
経営学者ジム・コリンズは著書『ビジョナリー・カンパニー』の中で、長期的に成功する企業は「価値観が組織の中で共有されている」と述べています。優れた企業では、社員が共通の価値観を持ち、その価値観が日々の行動に表れています。結果として、その企業独特の文化や空気が生まれるのです。
企業の空気は、経営者の理念から始まります。社長がどんな価値観を大切にしているのか、どんな行動を評価するのか、どんな姿勢でお客様と向き合うのか。その姿勢が社員の行動に影響し、やがて組織全体の空気をつくり出します。
例えば、顧客第一を掲げる企業であっても、実際には売上優先の判断ばかりしていると、社員はすぐにその矛盾を感じ取ります。逆に、経営者自身が顧客の声に耳を傾け、誠実に対応する姿を見せていれば、その姿勢は自然と社員に伝わります。理念は言葉ではなく行動によって空気になるのです。
飲食店の現場では、この違いが顕著に表れます。スタッフ同士が自然に声を掛け合い、お客様の様子を見ながら柔軟に対応している店では、店全体に活気があります。逆に、スタッフが黙々と作業だけをしている店では、どこか冷たい空気が漂います。お客様はその違いを敏感に感じ取り、再来店するかどうかを決めます。
私は、この空気を企業の「透明資産」と呼んでいます。透明資産とは、財務諸表には現れないものの、企業の成長に大きな影響を与える見えない資産です。理念、信頼関係、文化、そして空気感。それらが組み合わさることで、企業の独自性が生まれます。
現代の市場では、商品や価格だけで差別化することは難しくなっています。技術や商品はすぐに模倣されますが、企業の空気は簡単には真似できません。なぜなら、それは長い時間をかけて育まれる文化だからです。
経営者がまず意識すべきことは、会社にどんな空気が流れているかという点です。社員同士の関係は良好か、現場には活気があるか、お客様への対応に温かさがあるか。これらはすべて、会社の透明資産の状態を示しています。
強い企業は、この見えない資産を大切にしています。そして、その資産を意図的に育てることが、持続的な成長を生み出します。
ー勝田耕司
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