兄弟経営がまた難しい

拙著『親子経営の教科書』(マネジメント社)の出版の際、5社の親子経営企業で取材の機会を得ることがでた。5社のケースから親子経営企業の経営エッセンスを読み解いた。今日はその第7話。
【兄弟経営は互いに認め合えるかが肝要】
事業承継の際、兄弟が経営権を争うことは珍しいことではない。また、相続において、兄弟姉妹が争い揉めることもよくある話だ。父親が経営する会社に兄弟姉妹が入社しているケースは結構多くある。
それぞれが責任ある部署長に就いていることが多く、互いに競い合うことがある。互いに自己主張を繰り返し、譲り合うことができず、日々何かしらの軋轢が生じてしまう。そんななか、父親からの経営交代の話があり、互いに自分こそが後継者だと主張する。
結果、長男が後継者だと決定すると、納得できない次男が会社を出ることになる。会社を出た次男が会社を起こす。当然のように、同業社として互いに顧客の取り合いが始まることになる。
こういったケースは結構多くあるものだ。父親が亡くなった後も兄弟仲良く会社を経営しているケースはそう多くはない。なにかと兄弟間で軋轢があるものだ。ところが、世の中には、兄弟が上手く協力し合って経営をしているケースがある.
兄弟が互いに相手を認め、敬い合うことで上手く経営ができているケースは結構あるものだ。取材をさせてもらった会社は、先代も兄弟が社長と専務を務め、当代も同様に長男と次男が社長と専務をしている。
では、兄弟経営がうまくいく会社と、うまくいかない会社の違いはどこにあるのだろうか。私は長年この問題を見てきて、一つの結論を持っている。それは、能力の差でも、性格の差でも、株式の持ち分でもない。「役割」と「譲る心」、この二つだと思っている。
まず「役割」である。兄弟経営がうまくいかなくなる会社の多くは、役割が曖昧である。営業も見る、総務も見る、現場も見る、経営も口を出す、これでは互いに相手の領域に踏み込み、衝突が起きるのは当然である。
兄が会社全体と営業、弟が製造と社内体制、あるいは兄が外、弟が内というように、明確に担当を分けることが重要になる。縄張りを作るのではない。責任の範囲を明確にするのである。責任の範囲が明確になれば、互いを尊重するようになる。
そして「譲る心」である。私はこれが一番大切だと思っている。兄弟経営がうまくいっている会社の経営者は、不思議なことに皆同じことを言う。「自分が、自分が、と思ったら終わりです」と。
会社は兄のものでもなければ、弟のものでもない。会社は会社のものであり、社員のものであり、取引先のものであり、社会のものである。この考え方ができる兄弟はうまくいく。会社を自分のものだと思った瞬間に、争いが始まる。
兄が少し譲る。
弟も少し譲る。
互いに少し我慢する。
この「少し」ができるかどうかが、兄弟経営の分かれ道になる。
もう一つ大事なことを言うと、兄弟は仲良くする必要はないと私は思っている。誤解を恐れずに言えば、仲が良いことと経営がうまくいくことは別の問題だ。必要なのは仲の良さではなく、互いへの信頼である。
親子経営は感情の経営であり、兄弟経営はバランスの経営だと私は思っている。力のバランス、役割のバランス、報酬のバランス、そして心のバランス。このバランスが崩れたとき、兄弟経営は一気に崩れる。
結局のところ、兄弟経営の結論はとても単純だ。どちらが優れているかではない。どちらが社長になるかでもない。互いに、会社を残すことを第一だと考えられるかどうか、これに尽きると私は思っている。
自分が社長になって会社が潰れたら意味がない。自分が専務でも会社が発展すればそれでいい。こう思える兄弟がいる会社は強い。実際、私が知る会社は弟が社長で兄が専務という会社もある。
兄弟が互いに認め合い、信頼し合い、互いに譲り合う気持ちがあれば、その会社は上手く経営され、長く続くに違いない。
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