「経営再創業」のすすめ

【親から子への経営交代はビジネスモデル再創造のチャンス】
企業を取り巻く外部環境は本当に目まぐるしく日々変化している。経営者はまさに息をつく暇がない。多くの企業では、創業者が起業し順調に成長を重ねてきた売り上げがいつのまにか頭を打ち、業績が停滞し始めることになる。
経営者はいろんな手を打ち、業績の立て直しを図るが、なかなか思うようにはいかない。やがて、停滞していた売上げ、利益が右下がりになってくる。ちょうど、そんなときに多くの企業では、創業経営者から後継者に経営を譲るべき時期と重なることになる。
どのような事業も必ず経年劣化を引き起こす。創業経営者がやってきたビジネスモデルに少しずつ綻びが生じてくる。創業経営者が自らのビジネスモデルを改良、改革をしていくことは容易ではない。
世の多くの親子経営企業では、親から子に経営交代するタイミングがちょうどこのような時期に当たることになる。後継者は自らの使命として会社を繋いでいこうとする。ところが、父親のビジネスモデルが崩れ始めている。
後継者は、ただ会社を引き継ぐだけでもやるべきことが多くあるにもかかわらず、業績が低迷している中での経営交代である。後継者には会社を引き継ぐ相当な覚悟が必要とされる所以である。
そこで、私から後継者に提案がある。特に親から事業承継を受け、後継経営者となったなら、創業経営者と同様に、新たに事業を創造するつもりで事業の見直し、経営の見直しをしてもらいたい。
そう、「経営再創業」である。私はこの言葉を、単なるスローガンとして使っているのではない。後継経営者が置かれている現実を直視したとき、避けて通れない“経営の本質的転換”を意味している。
創業経営者は、ゼロから事業を立ち上げた。その時代、その環境、その人脈、その価値観の中で最適解を見出し、ビジネスモデルを構築してきた。しかし、その“成功の方程式”は永遠ではない。むしろ、時間の経過とともに陳腐化し、やがて足かせとなる。
経営再創業とは、過去の延長線上に未来を描くことではない。一度、すべてを疑い、すべてを見直し、「この会社は何のために存在するのか」「誰に、どのような価値を提供するのか」を根本から問い直すことである。
言い換えれば、後継者は「第二の創業者」になる覚悟が必要だ。もちろん、すべてを壊せと言っているのではない。長年培ってきた信用、顧客基盤、技術、社員などのいわゆる経営資源を再点検、再評価することから始める。
同じ資源でも、使い方を変えれば全く違う価値を生み出す。既存顧客に対する提供価値を見直す、新たな市場に目を向ける、商品やサービスの意味づけを変える。こうした視点の転換こそが、経営再創業の第一歩である。
ここで重要なのは、「小手先の改善」に終始しないことだ。コスト削減や営業強化も必要ではあるが、それだけでは構造的な問題は解決しない。売上が下がるのには理由がある。その理由の多くは、ビジネスモデルそのものの寿命にある。
だからこそ、後継者は“問い”を持たなければならない。なぜ、この商品は売れなくなったのか。なぜ、この顧客は離れていったのか。なぜ、競合に勝てなくなったのか。
そして、その問いを突き詰めた先に、「では、これから何をすべきか」という新たな仮説を立て、実行に移していく。この一連のプロセスこそが、経営再創業の実践である。
もう一つ、後継者に伝えたいことがある。それは、「孤独に戦うな」ということである。創業経営者と違い後継者にはすでに会社があり、社員がいる。外部の知恵を借りることもできる。
むしろ、第三者の視点を積極的に取り入れることで、自社の盲点に気づくことができる。親の影響力が強く残る組織においては、内部だけで変革を進めることは難しい。だからこそ、あえて外の風を入れる。これもまた、経営再創業の重要な戦略である。
最後に申し上げたい。経営再創業とは、決して“特別なこと”ではない。むしろ、企業が存続し続けるためには、何度でも繰り返されるべき営みである。親から子へ、そのバトンが渡される瞬間こそが、最も大きな変革のチャンスである。
過去に敬意を払いながらも、未来に責任を持つ。その覚悟を持った後継者だけが、会社を次の時代へと導いていくことができる。経営を引き継ぐとは、「守ること」ではない。新たに「創ること」である。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。

