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ヒットを導く商品会議技法

SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

株式会社りぼんコンサルティング

代表取締役 

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

2018年が終わりに近づいてまいりました。企業の商品戦略においても、個人においても旧来の価値観、ビジネスモデル、手法やノウハウを一新、リニューアルする時です。それは全身の血液を入れ替えるような、自社にとってそしてご決断したご本人にとって痛みを伴う作業かと思います。今、求められているのは「パラダイムを変える」リニューアルであり、従来モデルの延長線上においての改変、リニューアルではありません。

街角では「平成最後の〇〇〜」といった売り込みが増えている年の瀬です。ご存知の通り2018年(平成30)は「平成」時代の終焉です。今年はインターネット上の陣取り合戦はほぼ勝負がついた感があります。1993年(平成5)に商用利用がスタートしてからの25年、政治、働き方、人間関係、ライフスタイル、消費行動の全てが変化していきました。慣性の法則ではありませんが、一度生じた大きな流れは止まることはなく、ある種「なるようになってゆく」と想定できます。

さらに、今年は女性の就業率がはじめて「70%」に達しました。9月28日に総務省発表8月の労働力調査にて、15~64歳の女性のうち就業者の割合は前月比0・1ポイント上昇の70.0%で、初の7割超。「共働き、ダブルインカムで家計を回す」ライフスタイルが強くなりました。

このように、ふたつの事象をみても、大きく時代が変わっていることがわかります。しかし、まだまだこの国の仕組みは成長時代のモデルのまま。ゆえに、株価や地価は高騰し、景気はよく見えるのにGDPも賃金も増えない。所得格差、年金、国債累計、政府の成長シナリオに反して「がんばっても豊かになれない」国になっています。人口減も今のところ解決策がなく、2004 年12月にピークから激減の一途です。

国だけではなく、企業経営においても変わることができずにアタマの中は成長戦略時代のままです。さまざまなデータが実証していますが、「がんばること」が良い結果を生み出したのは1980年代まで。90年代以降は経済が成熟して巨大な生産力を得て物がゆきわたり、物への欲望が減退。わたしたちの家庭では、物はほとんど揃い、物を買うよりは貯蓄に回す実態があります。貯蓄に走る背景には生活者の「不安」があります。不安とは「老後不安」、少子高齢化時代の「わが子の将来に対する不安」です。ひいては少子化の問題もつながっています。

生活者の消費は低迷したままですし、先行きの販売拡大の見通しがたたないゆえに企業も設備投資をしない。消費も投資も増えないから、物もサービスも売れずに生産が拡大していかず、わたくしたちの所得も低迷するというスパイラル。衣食住が足りていて、必需品を求める時代が終わりました。成長時代とは異なる前例のない時代に突入している今、わたくしたちこそが、前例のない時代を生きる経営者として「新しい時代」、ニューモデルを創造してゆく使命を持っています。真にお客さんが求めている消費活動を市場に仕掛け、存在意義を発揮させる「知性」と「感性」が求められています。

キムチの素で有名なエバラ食品の「プチッと鍋」をご存知でしょうか。コーヒーに付いてくる“スジャータ”のような個別のポーション容器に入った鍋物調味料です。プチッと鍋は「新商品」という位置付けではありますが、主力商品だったボトル調味料の強みをそのまま生かし、パッケージをリニューアルし、2013年8月にリリースしたものです。

当初は寄せ鍋、キムチ鍋、白湯鍋の3種類をラインナップし、翌年3月までに出荷ベースで9億円を売上げ大ヒット。以降、ラインナップを拡大し、2016年3月期には「プチッと調味料」全体で27億円の売上げに成長しています。そもそもはボトル調味料の落ち込みが転機で、2012年春に個食ニーズにフィットする「イノベーション鍋」を目指した新商品開発プロジェクトを立ち上げ、単身世帯や2人世帯など世帯人数の減少に伴う「個食」という新しい市場を開拓しました。

最近わたくしの知り合いで、80代半ばで独居しているお客さまが「ヘルパーさんがすごく良い調味料を買ってきてくれた」ということで、「プチッと鍋」を見せてくださいました。もともとは料理好きな方で、ご自身で出汁を引いていました。が、年をとって料理がままならなくなって困っていたところに20代の介護ヘルパーさんがスーパーで買ってきてくれたそうです。「すごく便利で助かるんですよ!」と快活な笑顔が印象に残っています。実はこの商品、20代30代の忙しい共働き世代から主婦の一人鍋需要など使い方は様々です。従来のターゲット選定を超えた生活者の実態があります。

商品リニューアル戦略のポイントは、買い手である生活者が心の奥底に秘めた「必要・欲しい」のトビラをひらくことです。そのためには生活者の「欲しい」とか「わくわく」とか「インスピレーション」を刺激するような、感性に訴える知恵と工夫が必要不可欠です。

先生のお手本を見ながら描く「お習字」の時代は終わりました。わたくしたちに求められているのはむしろ、破茶滅茶、奇想天外なパワーで前時代を突破してゆくアートの感覚です。それぞれの会社が強みを生かしながら、発想の翼を豊かに広げ、生活者が潜在的に欲している、生活者の感性に訴えかける力強い商品サービスです。ゆえに、商品戦略会議、プロジェクトにおいての姿勢は「解がない」という白紙の状態からスタートすることが必要不可欠です。今を生きるお客さまの変化に対応し、変化を仕掛ける商品リニューアル戦略です。従来ブランドのお客さまに、さらに欲しいと思っていただく「変化」を仕掛けること。そして、変化を起爆させ、新しいお客さまに買っていただくこと。そのためには、既存商品をまったく違う角度で見つめる姿勢が必要不可欠です。「眼」をどこにもつか。生活者の眼になることは当たり前ですが、さらに踏み込んで、生活者のだれの「眼」になるかを決めることが何より重要です。

今年を振り返ってみてください。最初から「解ありき」の会議やプロジェクトならば、挑む意味がありません。厳しい言い方ではありますが、その「解」とは旧来の延長線上にあることを意味します。旧来の延長、その放物線は下降期に入っているのです。パラダイムを変えない限り、飛躍はありません。

あたらしい地図が求められています。罫もフレームも何もない純白の新世界が目の前にひろがっています。勇気を出し、自由に描きましょう。今までの古い殻を打破しましょう。だれもいない世界で静まり返り、孤独かもしれません。笑われることもあるでしょう。だからこそおもしろい、だからこそユニークな商品サービスを創造できるのです。いま飛躍の時です。ともに考え行動し、そのアクションをお導きできるようまだまだ年末、走り続けています。

 

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