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首都圏 注文住宅 事情通信

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

「反響」に最適化された構成

注文住宅の情報誌の東京版を買ってみました。
マンションの情報誌が面白かったので、しっかり読んでみようと思い立ったのです。注文住宅の仕事を長い間やってきましたが、こういった本の東京版を見るのは実は初めてです。

買った号の特集は「ベストプラン実例100」というテーマで、

  • KITCHEN/DINING
  • LIVING・BATHROOM
  • TOILET・BEDROOM
  • CHILDREN`S ROOM
  • GARAGE
  • ENTRANCE/EXTERIOR
  • FACADE

といったカテゴリー別になっています。これはそそります。「つかみ」は十分です。

さっそく本を開いてみますと、80ページもの紙面に豊富な写真・平面図を中心にモデルハウスではない実際の住まいとして建てられた実例が紹介されています。思ったより見応えがあります。前後に行ったり来たりして読んでいるうちに気づいた事がありました。

●掲載事例のほとんどが設計事務所らしきクレジットがある

この本の目玉は「ベストプラン実例100」という巻頭の特集です。この本に料金を払って広告や記事を掲載しているのは工務店・ビルダーですが、巻頭の特集の掲載物件の大半が設計事務所が手がけたものです。工務店・ビルダーらしきクレジットはほぼありません。要するに「映え」のするもので固めてあるということかと思います。いつも料金を払ってもらっているお得意様である工務店・ビルダーの実例では紙面が成り立たないということを暗に物語っています。

「反響」に徹し最適化されているので、こうなるのだと思います。最近では「人のふんどしで相撲を取る」的に「他社の実例で受注を取る」ことがあたりまえ、ぜんぜん平気な事業者が多くなってきています。ということもあって各社どんどん似てくる訳です。そうして、さらに他社事例を使わないと紙面構成できなくなってきているのかもしれません。実際に提供しているものと広告素材のギャップに拍車がかかっているのです。

 

●掲載事例のほとんどに施工者のクレジットがない

そして、どの物件にも必ず「施工者」が存在するはずなのですが、実例の物件を請け負った会社が設計施工の場合以外は「設計者」のみが紹介されていて「施工者」は紙面には登場しません。これは綿々と引き継がれているメディアの作法です。どうしてなのでしょう?アフターサービスは「施工者」が行なっているはずなのに、違和感を覚えます。現代でも、直接受注をした元請業者以外は表に出ないお約束のようです。

業界内では「注文を取れる者が偉い」というヒエラルキーが継承されているように思われます。そして、誰が施工したものかは関係なく集客できる広告素材(実例写真や図面・文)を持っていることがメディアの強みにもなっているようです。

 

●東京版であるが物件は全国あちらこちらの実例である

紹介されている実例の東京都率は低く、数えるほどしか登場しないのはやはりロケーション的なものでしょうか。この雑誌は全国各県版がありますので、全国での取材素材を総動員して再編集したのでしょう。おそらく、他県版でも巻頭を飾っているものと思われます。

ネット記事との連携や編集作業の効率化を考えると当然の成り行きかもしれませんが、こういったメディアの広域化が住宅の地域性・個性を失わせる一因になっていることは間違いないと思われます。

 

↑冒頭の特集「ベストプラン実例100」はさしずめ「Pinterest」のようです

 

 

営業マンより頼りになる「家づくりスタートブック」

住宅の営業マンをやっていますと、お客様に同じ話をする機会が多くあります。その中でも家づくりの流れや手順といったテーマは必須です。各社・各担当者でこういったものは準備していると思いますが、網羅するには場合分けも多くてわりと複雑なものです。また、お客様と直接会って長い時間を過ごしにくい昨今では、個別の課題解決により多くの時間を充てるためにも、ここで時間を取らない様に事前に済ませておきたい分野でもあります。

この本には「家づくりスタートブック」なる綴じ込み付録のようなものが付いていました。この部分だけ異なるページサイズで15ページほどで家づくりの流れ・手順・チェック項目などが見やすくまとめてあります。また、家族で話し合いながら意見やチェックを書き込めるようになっています。広告や記事を掲載している工務店・ビルダーの営業担当者に成り代わって初期対応をしてもらえるようになっています。親切です。

そして感心したのは、

■何社ぐらいのイベントに参加したか?
■何社に見積もりを取った?
■自己資金はどれくらい準備した?

といった読者が「普通どうなんだろう?みんなどうしてるのだろう?」と思うであろう点をそっとデータとして載せてあることです。1〜3年以内に注文住宅を建築した人を対象に2018〜19年にアンケート調査したもので、背中を押す効果が見込めそうです。おそらく全国の大半の営業マンは自社のお客様の範囲でしか回答できないでしょう。そして紙面ではモデルハウス紹介や資料請求ページに続きます。絶妙な順番です。

全体としては「良くできているなー」と感心しましたが、懸念材料もありました。

■そもそも居心地のいい住まいに必要な要素がチャック項目に入っていない
■長期的な視点での生活価値に関する内容には触れられていない
■全体として客観性のあるデータでまとめてあるので、上記欠陥に気づきにくい

このようなことは、市場の大半を占める一般的な事業者は意に介さないことかもしれませんが、注文住宅で最も大切な要素が欠落していると思います。反響や集客を目的に最適化・編集されている雑誌なので、完全に紙面まかせで家づくりに臨むのはやはり危ういものがあります。そもそもメディアはコミットしている対象が違う訳ですから、少し考えてみれば当然の事です。

↑中綴じで読者をそそる「家づくりスタートブック」

 

 

「実例ラインナップ」の巧み

紙面の後半には「実例ラインナップ」という「本丸」に続きます。料金を払ってこの本に掲載している各社の実例ページです。ここまでの前半で十分な「露払い(つゆはらい)」を終えて読者が現実的に候補を選択する場所です。

しかし、ここまで来るとかなり建物のグレードやセンスが低下しています。「夢」から「現実」に引き戻された感があります。しかし、せっかくここまで読み進めてきた読者が本を閉じてしまわないようにここでもシッカリ工夫がされています。

そうです。価格帯別表示です。

この本では、

●〜1500万円
●1500万円〜2000万円
●2000万円〜2500万円
●2500万円〜3000万円
●3000万円〜3500万円
●3500万円〜4000万円
●4000万円〜

といった7段階に分けてありました。

こういうふうにまとめてあると、ついつい「怖いもの見たさ」で高い価格帯も含め全体を見比べてみたくなりますよね。そうして、私もまんまと術中にはまり全体を見比べていましたところ、またも「違和感」をい感じました。

どう見ても価格帯と実例の内容が合わないものが多数見受けられるのです。本体価格として見ても「東京でこの価格ではとても無理だろう」と思えるものが散在しています。しかも消費税込みだそうです。

「本体価格と一言で言ってもどこまで入ってる値段なのか?」という疑問が湧いてきます。各ページにはそういった表記はありませんがページをめくってあちこち探してみると、ありました。小さいフォントでこのコーナーの中表紙に書かれていました↓

「本体価格が表示されている場合、内容は会社によって異なります。詳細は各社にご確認ください。」

このあたりも業界の伝統です。

 

↑このコーナーの中表紙に書かれてた「業界の伝統」

 

しかし「免責事項」文中の、

「本誌では掲載企業の責任において提供された住まいおよび住まい関連商品等の情報を掲載しております。本体価格・坪単価など情報の内容を保証するものではありません。」

「表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格と異なる場合があります。」

とか、すごいですね。なるほど。私には「フェイクも入ってます」というふうに読めますが、皆さんはいかがでしょうか?

 

あなたの会社では、営業マンの「販売手法の型」のようなものはありますか?社長には様々な課題や目標を捉える意義を共有するための「考え方の型」をお持ちでしょうか?

 

 

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