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創意工夫なくしてデジタル化の効果無し

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

2年続いて幼い子供が送迎バスに取り残されて命を落とす、という悲しく衝撃的なニュースが世の中を騒がせています。再発であることは間違い無いので、SNSでも「なぜもっとデジタル化するなりして、車内に取り残されていることを検出できないのか?」という声が飛び交うようになりました。この様な悲しい事故を絶対に無くすため、デジタルデバイスのチカラを借りる…ということは一見して素晴らしいことに見えます。また、私はそれを否定するものでもありません。しかし、よく考えてみるとそこには我々の「思考停止」が内包されている様に思うのです。

今回の事案についても、子供の出欠確認アプリが使われていました。しかし、その運用がよろしくなく、親に確認することなしに欠席扱いされていました。更に、「車内にセンサーを入れて・・・」というアイディアについても、それに依存しきってしまって大丈夫なのか?という疑問がつきまといます。故障してしまい、それに気がつかないまま放置されていたらどうなるのか?とか、なんらかの原因で誤報ばかり出す様になったら、人間は自然に警報を無視するようになるのではないか?とか、およそ「機械に頼り切る人間の慣れによる事故再々発」という心配が首をもたげます。

他国ではどのようにやっているのか、少し調べましたが、例えばアメリカでは「バスのキーを抜いたあと一定時間内に最後尾の座席付近にあるスイッチを押さない場合、警報が鳴る」という非常にアナログな仕組みがあるという情報を見ました。使っている技術はデジタルかもしれませんが、非常にシンプルで原始的(失礼)です。しかし、これは「人間は怠けるものである。間違えるものである。」ということを大前提とした一種の強制的ルールと捉えられます。そこには一切の自動化はありません。ただただ「車内に人が残っていないかを確認するのは乗務員の義務なので、そのルールを全うさせるのだ」という至極ごもっともなポリシーがはっきりと感じられます。

こう考えると、冒頭の「デジタルデバイスで車内に取り残された子供を検出して…」という仕組みは、その仕事を担当者から奪っているだけで、それ以外の失敗や見逃し、機器の故障には耐えきれません。注意義務の責任を機械に担わせている様なものです。要するにこれら二つの対策は一見似通ってはいるものの、根本的に発想が異なるわけです。

ここまで色々思考すると、デジタルデバイスに頼る対策は、いかに日本人が思考停止に陥っているか、がひしひしと伝わってきます。様々な事象に柔軟に対応できるのは機械ではなく人間です。その人間のミスを防止するための仕組みを考え、最低限の投資で実現する。これが本当の工夫なのだと思います。

会社のデジタル化やDXも全く同じです。「なにもかもデジタルにして自動化して・・・」という発想で取り組んでも、価値を創造することはできません。投資規模が肥大化し、しかし効果が得られない、という負のスパイラルに陥るだけです。企業や自分達の成長のことをきちんと捉え、それを実現するために創意工夫をこらし、必要最低限のデジタル化を実行しつつ効果を確認して方向を修正する。この方法しか中小企業がデジタル化を推進することはできません。なんでもかんでもデジタル化して自動化する、ということができるなら、とっくにあらゆる産業が無人化しているはずです。

子供が取り残されていることを検出して警報を出す…この対策案を否定することはしませんが、とにかく創意工夫でできる対策からすぐに実行に移す。それが難しいところをデジタルで補う。このような人間の創意工夫がなければ本当に効果のある、人間にとって価値のあるデジタル化はできないのだと強く思います。

皆さんの会社ではいかがでしょうか?社長や社員は創意工夫の努力を続けていますか?

 

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