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CES視察 コンシューマセキュリティに関する動き

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

直近5回のコラムについては、アメリカのCESで見聞きしたことを中心に話題を提供してきました。おそらく(?)これが最終回となりますが、今回はセキュリティに関する話題です。

CESでの展示は、デジタルガジェット系、家電系、自動車などがどうしても多いので、セキュリティについての露出はそれほど多くはありません。しかし、昨今のデジタル技術を使ったデバイスや製品は、そのすべてが攻撃や犯罪などのターゲットになってしまうリスクを内在しており、セキュリティの話を避けて通ることはできないことは、どのメーカーも熟知しています。セキュリティはこれらの最先端な製品の地味な屋台骨であるわけです。

そんなこともあって、CESのカンファレンスでもセキュリティに関するパネルディスカッションがいくつか開催されました。いくつか特徴的な発言を取り上げてみます。

・61%のコンシューマーユーザーは、保有するデバイスがどの程度安全なのか知らない
これは、スマホのことだけを指しているのではありません。当然スマホのセキュリティについてどれだけの人が気を使っているのか、最近の犯罪事例を見ていると心配になってしまうこともありますが、皆さんの身の回りにはそれ以外にもインターネットに接続されて機能しているものが多くなってきているはずです。日本で身近な例では、監視カメラが代表的なものでしょうか?インターネットを介して自宅の様子などを確認できるため、便利に使っている人が多くなってきていると思います。ご多分に漏れずこれもデータの漏洩などの犯罪に巻き込まれる可能性がゼロではないデバイスですね。カメラがどこまで安全なのか、気にかけている人はおそらく少数派でしょう。CESで展示されていた「中身がわかる冷蔵庫」などを見学していて、「これは便利には間違いないが、第三者にこれをみられるのは恥ずかしいなぁ」とも思いましたし、冷蔵庫に搭載されているコンピュータが第三者に乗っ取られてしまうと「自宅の冷蔵庫がサイバー犯罪に使われてしまう」という事態にもなりかねません。

・企業向け販売で育ってきたセキュリティ関連会社は一般顧客への販売方法を知らない
これはあるアナリストがボソッと言った言葉で、パネラーの人たちも一様にうなずいていましたので、おそらく業界の人たちが暗黙に了解している業界の弱点なのではないかと思います。ウィルス検出ソフトなど、かなり基本的なセキュリティ対策商品については、その存在意義も含めて一般人の知るところとなってきていると思います。しかし、ウィルス検出ソフトを導入しても、それでセキュリティ対策が完璧になるわけではなく、実に様々な対策をとらねばなりません。企業向けにはそれらに細かく対応する商品やサービスが出そろってきており、ベンダー各社はその拡販に余念がないわけですが、個人向けについては全く手が回っていない、市場すら形成されていないのが実情です。数年のうちには個人でもセキュリティに関する対策をとらねばらない「好ましくない事件」が発生し、それが引き金となって様々な活動が展開されるのではないかと予測していますが、現実は後手に回っていると思います。また、コロナによって子供たちがタブレットやノートPCを使う様になってきましたが、デジタル教育を立ち上げるのに手いっぱいで「便利さと隣り合わせの危険の存在、およびその回避方法」について十分な教育ができているとは思えません。これも企業向けで育ってきたセキュリティ業界にとって経験したことがあまり無いため、企業向けとは別の難しさを感じている、との話をしているパネラーもいました。(例:スマホのマイクへのアクセスを許可しているアプリがどれだけあるかを、ユーザーはほとんど認識していないなど)

・企業は「デジタルトラスト(顧客イメージ戦略としての)」の考え方を持つべき時代となった
デジタルトラストとは、少し広い解釈ができる造語ですが、企業イメージの一貫としてセキュリティなどに対する信頼性を高めて訴える、という戦略のことを意味します。事例がいくつか紹介されていましたが、大企業中心にデジタルトラスト専任部隊を組織化し、KPIを定めて経営指標とし、顧客とのコミュニケーションにも反映させている、という説明が何社からかありました。日本でも大企業中心にデジタルトラストを掲げている会社が増えてきていますが、その中身を見てみると「サプライチェーンのセキュリティ」の言葉が多く使われています。本コラムでも何回か警鐘を鳴らしてきましたが、大企業のサプライチェーンに組み込まれている中小企業を狙い、そこからデータを盗み取る事例が増えていることから、大企業側でデジタルトラスト戦略を立てそれを推進してゆく、というトレンドにあるのです。パネルディスカッションに登場した米国の会社たちは考えをさらに推し進め、「透明性が大切」と訴えていました。つまり社内でセキュリティについてどのようにアクションを取り、KPIがどうなっているのかを顧客に公開してゆこう、という考え方です。自社の欠点も顧客に公開することで、顧客との関係性を高める戦略を取る、という意思ですね。カスタマーコミュニケーションの変革とも言えるこの考え方は、近々日本にも入ってくると思われます。

6回にわたりCESで得た事柄をベースにコラムをお送りしてきました。このような展示会やカンファレンスは世界中から多様な人たちによる情報提供が展開されるので、ビジネス的にも示唆に富む知見を得られます。「当社は海外との取引の予定は無いから・・・」と萎縮するのではなく、海外の情報を積極的に取り入れ、現在のビジネスに活かすことも必要ではないでしょうか?

 

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