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「ハウス・オブ・グッチ」に学ぶ

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

「結構、面白かった」と奥様も楽しめた様子です。映画「ハウス・オブ・グッチ」を鑑賞した感想です。グッチ家の背景と今の状況を知りたくなりました。
 
 
1.ハウス・オブ・グッチ
 
有名ブランド「グッチ」の創業者一族のお家騒動が、殺人事件にまで発展するという実話に基づく映画ですので、リアリティーがあります。経営権をめぐる騒動ではありますが、やはり気になるのは家族関係と株式の保有状況です。
 
創業者であるグッチオ・グッチはフィレンツェ生まれです。6人の子供がいるなかで、3男アルド(アメリカ市場を統括)と5男ロドルフォ(イタリア市場を統括)が事業を承継します。3男アルドが二代目の社長となり、隆盛を極めました。
 
創業者グッチオ・グッチの保有株式は、3男アルドと5男ルドルフォが50%ずつ均等に相続します。この時点で何か嫌な予感がありますが、創業者の薫陶を受けた第2世代の二人の息子が経営者の時代には何とか凌ぎます。
 
そして、3代目となる世代の登場です。5男ロドルフォの相続が先に発生し、創業者の孫となるマウリツィオが50%の株式を相続します。一方の創業者の3男アルドは経営の実権を握りつつも、3人の息子(創業者の孫)に10%の株式を均等に分け与えました(3.3%)。
 
この3人の息子の一人パウロ(創業者の孫)がトラブルを起こしたため、一族を追放されます。このパウロとマウリツィオが手を組み、過半の株式を確保することで会社の経営権を握り、二代目オーナーのアルドを追放しました。
 
映画はこの後、さらに面白くなっていくのですが、ファミリービジネスの観点からは、株式を均等に相続していくことの危険性を詳らかにしてくれる事例です。最終的にグッチ家の株式はすべて投資会社に売却されて現在にいたります。


 
 
2.ラグジュアリーブランド
 
インターブランド社のレポートである「Best Global Brands 2022」によれば、ブランドランキングの価値でグッチ30位に入っています。その上位にいるラグジュアリーブランドは、14位ルイヴィトン、22位シャネル、23位エルメスです。
 
各社ともにファミリービジネスが出発点ではありますが、現在の状況はかなり違います。大きな資本なかの一つのブランドとして位置付けられているか、独立系のメゾンとして単独で生き残る戦略か、など色々な切り口で分類できます。
 
ルイヴィトンの特徴は所有と経営が分離しています。創業家兼職人として影響力を保持していますが、経営はプロに任せています。1970年以降、日本人の観光旅行客がルイヴィトンの本店に殺到した結果、経営の分離を決断したといわれています。
 
エルメスは公開企業のファミリービジネスです。ルイヴィトンがエルメスを買収しようしたが、エルメス創業家の断固とした反対姿勢により、断念した経緯があります。シャネルが特徴的なのは非公開会社を貫いていることです。
 
企業としての経営戦略や創業家の位置付けや資本関係の変遷は興味深いものがあります。ちなみに、ブランドランキングの6位にトヨタがランクインしているが嬉しいですね。
 
 
3.長い業歴は信用を生む
 
グッチは皮革製品、ルイヴィトンは旅行鞄、シャネルは帽子店、エルメスは高級馬具というファミリービジネスから出発して、ブランドを築き上げています。この中で最も古い会社は1837年創業のエルメスです。
 
エルメスは今でも創業の馬具を作っています。成長とともに企業の買収を進めますが、規模拡大のための買収ではなく、職人技を維持しておくための買収であったことが特徴的です。
 
創業200年以上の企業の数を国別で見ると、1位が日本、2位が米国、3位がドイツ、4位が英国となります。創業100年以上でも英国のかわりにスエーデンが入るだけで、顔ぶれは変わりません。
 
ラグジュアリーブランドの各社は昔からありそうなイメージがありますが、前述の4社の中に200年以上まえからある会社は一つもないという事実があります。もっとも、今の時点ということですので、エルメスもシャネルも射程圏内にいます。
 
資本主義を徹底しますと利益と成長ということになりますが、我が国の経営の価値観はそれだけではないように思います。やはり、長く、着実に続けていくことを大切にする文化があるのでしょう。
 
長い歴史は信用を生みますし、安定した企業運営は社会からの信頼を育みます。資本市場に左右されない同族企業だからこそ、独自の経営スタイルが可能です。今の時代も飛躍の芽はあるはずです。
 
今後の事業のあり方について、経営、株式、家族の3つの視点から方向性を定めておくことが必要なのだと思います。特に、株式を分散して相続させる場合に生じる問題については注意が必要です。

日本人の有名デザイナーのブランドも海外の大手資本がもっているケースが多いのにも驚かされます。社会人になってまもなく起きた、君島家のお家騒動が印象にのこっています。
 
 
【まとめ】
 
同族企業の事業承継では、経営権と財産権を分けて検討することが必要になります。家族の中の問題は、多くの場合、社長が去った後に発生します。「自分がいなくても大丈夫」と確信をもって言えますか?

 

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