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大きな誤解がある! IT部門の作り方

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

300名規模のある会社から「IT部門を作りたい」というご相談を受けたことがあります。その会社ではいろいろと経緯があって、過去IT部門を作ったことがあり、2名の社員で運営を始めたのですが、残念ながらこの2名の社員が都合で相次いで退職してしまい、組織が有名無実化してしまっていました。そこで、今回再起を果たそう、ということになったのです。そして、当然の様に社長から「技術者を2名ほど採用する」という話を聞かされたわけですが、その採用活動を保留するように社長にお願いしました。

IT人材が空席になっているので新たに技術者を採用したいのはよくわかります。しかし、「IT部門に入れるのだから技術者でなければだめだ」と考えるのは思考の飛躍で、よくある大きな誤解です。どのようなミッションを担わせるのかによっては、技術者ではミスキャストになってしまう可能性が高いからです。このミッションを明らかにしないことにはどのようなキャラクターの人材を採用すれば良いのかわかりません。そこで、社長に「2名採用して何をやってもらうおつもりですか?」と尋ねました。すると、以下の様な回答が返ってきました。

①PCとネットワークの管理

②いろいろな社内システムの開発

①は理解できます。300名の規模にもなれば、社員が使っているPCの数も多く、管理も大変になっているはずなので当然ですね。しかし、②は曖昧で問題含みです。仮に、2名ともソフトウェアの技術者だったとします。この二人に「XXXの業務をシステム化せよ」という指示をした場合、おそらく手を付けられないまま時間だけが経過することになります。というのも、技術者はソフトウェアの機能を開発することには長けていても、業務を分析してどの部分をどのようにソフトウェア化するべきか知見を持っていない場合が多いからです。これが、「大きな誤解」なのです。

では、「業務定義の経験にも長けた技術者を採用すれば良いではないか」という話にもなりますが、そうなると「業務分析して、現場に提案して、要件定義して、開発して…」という各段階を2名でやらなければならず、とても手が回りません。また、このような人材は往々にして引く手あまたですから、希望年収も高く中途採用市場ではなかなか見つけられない逸材でもあるため、中小企業が直接採用することは極めて難しいと言わざるを得ません。

ではどうすればよいのか?ですが、私はその社長に「技術者を採用するのではなく、現場部門に人を補充してそこからIT部門に異動させるのはどうか?」とアドバイスしました。この場合、現場部門の社員は当然ITに関する知識を持っていませんので、いきなり「開発」作業はできません。なので、ソフトウェアの開発は外部に委託する、または適切なクラウドサービスを探してくる、という割り切った方針とし、社員はあくまでも「業務分析と要求定義」に徹した業務をしてもらうのです。もちろん、IT関係の知識がゼロでは難しい局面もあると思いますので、教育は必須です。しかしいきなりソフトウェアを開発させるわけでもないので、初歩の教育を施す程度で戦力になる可能性が極めて高いのです。

反対に、ソフトウェア技術者に現場業務を教えることの方が、きわめて困難です。なぜなら、「現場業務は必ずしも理にかなったものになっていないことが多い」からです。これに対処するためにIT化を進めたいわけですから、当然ですね。理にかなった状態になっていない、言い方を変えればめちゃくちゃな状態にあるわけですから、業務の分析と整理が必要です。これはソフトウェア技術者の仕事ではありません。無理にやらせようとすると、精神的な負担となってしまい、最悪のケースでは体調を崩す人まで出てきてしまいます。

もし人材をもっと多く採用できるのであれば、業務分析担当と開発技術者を複数束ねて組織ヒエラルキーを構築することは当然可能です。ただ、「ゼロから技術者だけを採用する」というのは大きな間違いであることはお判りいただきたいと思います。

「IT人材を採用する」と息巻いている社長を見かけることが多くなっていますが、大きな誤解を持ったままミスキャストをしてしまうと会社にも社員にも不幸なことが発生するだけです。是非この点にご注意いただき、人材採用活動に反映させていただければと思います。

 

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