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CES2024に見る 車と家電とAIと半導体の陣取り合戦

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

テック系の世界最大級の展示会CES。昨年に続いて今年も行ってきました。昨年は様々なトップリーダーの話を聴こうと、多くのカンファレンスに顔を出したため、展示を見る時間が極端に少なくなってしまった、という後悔が残りました。そこで今年は正反対に全振りし、カンファレンスは無しで展示だけを見る、という時間の使い方をしてみました。結果的には主要なゾーンはほとんど回ることができましたので、全体的な傾向を俯瞰することができたと思います。個々の展示などについては、このコラムでは割愛しますが、全体を俯瞰した上での感想を述べてみましょう。

CESは家電ショーが発展して、現在では総合的なテクノロジー展になっていると同時に、自動車関係の展示も数多く取り入れられています。今年も多くの自動車メーカー(残念ながら日本メーカーはホンダとソニー・ホンダぐらいでしたが)が様々な展示を行っていましたが、今回ふと気が付いたことがあります。それは、「業種の壁が崩壊した」ということです。

解りやすいのは、ホンダとソニー・ホンダです。ホンダは2種類のコンセプトEVを展示していましたが、あくまでもコンセプト展示であり完成度が高いとは言えません。さらに、このコンセプトにしても、デザインこそ未来形ですし、ロゴマークすら変えてしまっていますのでホンダの本気度が垣間見えましたが、その中身は従来の車の延長線にしか見えず、あまりイノベーションを感じませんでした。しかし、ホンダの系列であるはずのソニー・ホンダで展示されていたEVのAfeelaは一見しても非常に高い完成度に仕上がっていると見えました。ソニーとの合弁によって、家電テクノロジーの取り込みを図っていますので、社内のエンターテイメント空間化は期待を裏切らず、マイクロソフトと組んで生成AIも組み込まれ、自動運転も当然視野に入っていますので、移動時間を楽しむ時間にする、というコンセプトをきちんと実現しつつあると思います。しかも、クルマとしてみたときの完成度も非常に高いと思えました。「来年(2025年)には発売する」という情報もありますので、極めて量産車に近いレベルまで到達していると思うのですが、一方でホンダ本体の展示はコンセプトのみ。このまま進むと、当然のことですがソニー・ホンダの方が先行し、ホンダは下剋上の憂き目にあいそうです。

 

さらに、半導体メーカーの車向けの展示も気になりました。昨年も展示されていたそうですが、クアルコムが「デジタルシャーシ」と銘打って、インパネや自動運転周りの、いわゆる自動車のデジタルの部分をプラットフォーム化して汎用化するという展示をしていました。また、AMDも車載用のAIチップを発表しており、半導体メーカーが車の基幹部分を抑えようとしている動きと読み取れます。

こう考えると、クルマという存在を再定義する過程の中で、半導体メーカー、家電メーカーが従来の垣根を越えてクルマ作り、もっと言えば移動手段作りに参入していると言えるわけで、もはやクルマはクルマメーカーの意のままにならない状態、と言えると思います。

日本のクルマメーカーの展示が少ない中で、これらの「陣取り合戦」の行方が心配になってしまいますが、これだけ多くのプレーヤーが混沌と争う事態になっていますので、突然大変なイノベーションが現れないとも限りません。ソフト分野のメーカーも参入してきますので、突然クルマという存在が再定義され、しかもそれが1社の寡占状態を生む日も来るのではないかと思います。そうなるとクルマメーカーは極端なことを言えば単なる組み立て屋となってしまいますね。近いうちに必ずくるであろう変革の嵐が日本のクルマメーカーの想定を超える事態でなければ良いなと思う、今回のCESでした。

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