成熟期に入った会社で、なぜ「指示待ち社員」が増えるのか
「創業当初は社員の人数も少なくて、経営者の言いたいことがすぐに伝わった。人数が増えて、経営者と直接話したことのない社員が増えてくると、どうも事情が変わってしまう」…こんな嘆きを聞くことがあります。
「それは世代が変わったのだから仕方ない」とか「最近の若者はワークライフバランス重視だから」といった安直な理由付けがされることもありますが、実は問題はもっと根深いことがほとんどです。
創業期の会社では、経営者の考えや価値観が、意識せずとも社内に行き渡ります。朝のちょっとした会話や、会議の余談、時には愚痴や失敗談。そうした日常の中で、「この会社は何を大切にしているのか」「何を良しとして、何を良しとしないのか」が、空気のように共有されていました。
ところが、社員の数が増え、組織としての階層ができ始めると、その前提は崩れます。経営者の言葉に直接触れる機会が減り、判断の背景が見えなくなる。結果として、社員は「正解がわからない」状態に置かれることになります。
正解がわからない環境に置かれた人は、どう行動するでしょうか。多くの場合、自分を守る方向に動きます。余計なことはしない。言われたことだけをやる。責任を負う判断は避ける。こうして、組織の中に少しずつ「指示待ち」の空気が広がっていきます。
この状態を見て、「最近の社員は主体性がない」「モチベーションが低い」と感じる経営者も少なくありません。しかし、これはやる気の問題ではありません。社員が怠けているわけでも、能力が低いわけでもない。ただ、「自分で判断していい範囲」が見えなくなっているだけなのです。
人は、自分の行動がどこにつながっているのかがわからないと、動きようがありません。会社としてどこを目指しているのか。その中で、自分の仕事にはどんな意味があるのか。そのつながりが見えなくなると、仕事は「作業」になり、組織はバラバラになっていきます。
ここで大切になるのは、経営者の考えや判断の軸が、きちんと社内に伝わっているかどうかです。なぜこの事業をやっているのか。なぜこの選択をしたのか。何を優先し、何をあえてやらないのか。これらが一貫した形で伝わっていると、社員は自分で考えて動けるようになります。
その状態では、細かな指示は必要ありません。相談の質が変わります。「どうしたらいいですか?」ではなく、「私はこう考えていますが、どう思いますか?」という会話が増えていきます。チームワークも、「仲良くすること」ではなく、「同じ方向を向いて力を合わせること」へと変わっていきます。
一方で、評価制度を変えたり、研修を増やしたり、1on1を導入したりしても、なかなか効果を感じられない会社もあります。それらの施策が悪いわけではありません。ただ、判断の軸や仕事の意味が共有されていない状態では、どんな仕組みも形だけになりやすいのです。
社員が指示待ちになるのは、結果であって原因ではありません。その前段階で、経営者の考えが「伝わらなくなっている」サインが、すでにあちこちに出ているはずです。
社員にもっと主体的に動いてほしい、チームとして力を発揮してほしいと思うのであれば、まずは立ち止まって考えてみてください。この会社は、何を大切にしているのか。その判断基準を、自分は日々どんな言葉と行動で示しているだろうか、と。
さて、あなたの会社ではどうでしょうか。
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