ヒューマノイドは日本産業の切り札になるか?
今年(2026年)正月にアメリカで開催されたCESでは、ヒューマノイドが数多く展示されました。展示会の雰囲気から言えば、まさに「ヒューマノイド元年」と呼ばれても不思議ではない状況です。特に中国メーカーを中心に、非常に多くの企業がこの分野に参入しており、開発競争は急速に激しくなっています。しかも驚くべきことに、機体価格はすでに激しい価格競争に入っており、急激に低下しつつあります。数年前まで研究開発の世界の話だったヒューマノイドが、いよいよ実用段階に入りつつあることを実感させる光景でした。
ところが日本国内の報道を見ると、ヒューマノイドの用途は福祉や介護といった分野に偏って紹介されることが多いように思います。もちろんそれらの分野でも役に立つでしょう。しかし、その報道の影響なのか、産業界ではまだ「自分たちの問題」として捉えている経営者が少ない印象があります。私はむしろ逆で、ヒューマノイドの本命は産業用途だと考えています。
理由は単純で「人手不足」です。
現在でも製造業を中心に、外国人人材に依存する傾向が年々強まっています。しかしここへ来て、慢性的な円安や世界的な物価高の影響もあり、日本で働く魅力は以前ほど高くありません。アジア諸国の賃金水準も上昇していますから、日本だけが人材を集められる時代ではなくなってきています。そうなると、工数不足を補う方法は限られてきます。結局のところ、ロボットに頼る以外の現実的な選択肢はほとんど残っていないのです。
ヒューマノイドは言うまでもなく人型のロボットです。従来の産業用ロボットと違い、人間が働く環境をそのまま利用できるという利点があります。人間が歩ける通路はあるけますし、人間が使う工具も使えます。なんならドアを開けて移動することもできます。しかしこれまでロボット導入の大きな障壁となってきたのが「ティーチング」です。ロボットに動作を覚えさせる作業には専門的なスキルが必要であり、そのスキルを持つ技術者が社内にいなければ運用が難しいという問題がありました。
ところが最近、この状況を大きく変える技術が登場しています。それが VLA(Vision-Language-Action) と呼ばれる技術です。これはカメラによる視覚情報と言語指示、そして行動モデルを組み合わせたAI技術で、人間が作業の手本を見せることでロボットが動作を学習できるというものです。つまり、従来のような専門的なティーチング作業を行わなくても、現場の担当者が音声や簡単な指示でロボットを動かせるようになりつつあるのです。
さらにヒューマノイドには「目」があります。カメラとAIによって、物体や人間を認識することはもちろん、文字や数字、バーコードなどを読み取ることもできます。これらの機能を組み合わせれば、中小企業の工場でも搬送や部品ピッキング、簡単な検査などで十分に役立つ可能性があります。
もちろん現状のヒューマノイドには課題もあります。動作はまだ遅く、手指の動きも人間ほど器用ではありません。しかしその点だけを見て「まだ完成度が低いから使えない」と判断してしまうのは、あまりにももったいない考え方です。ヒューマノイドは充電時間を除けば休憩は不要ですし、夜間も働き続けることができます。多少動作が遅くても、単純な作業しかできなくとも、とにかく休みなく働き続ける労働力として十分価値があります。
例えば工場内の搬送作業や部品のピッキング、あるいは簡単な検査などであれば、人間ほどの器用さがなくても十分に役割を果たすことができるでしょう。しかも役割を単純化しておけば、複雑なシステム連携を行わなくても現場で使い始めることが可能です。
そうして現場で使いながら、ソフトウェアの精度が向上し、動作が改善されていくという進化も期待できます。技術というものは、現場で使われてこそ改良が進むものです。完成してから使うのではなく、使いながら完成していくというのが実際の姿でしょう。
問題は、そうなってから慌てて導入を検討する企業が多いことです。その時にはすでに、使いこなしている企業との差が大きく開いている可能性があります。多少の不満があっても、「この技術を何に使えるか?」という視点で考えてみることが重要です。そうして創意工夫を凝らせば、活躍の場はいくつも見つかるはずです。
AIの活用でも、日本は世界と比べると一歩出遅れました。回答精度が悪い、実用にならない、といった欠点ばかりを見つけて「使えない理由」にしてしまったからです。ヒューマノイドが同じ道をたどらないよう、ぜひ今から応用を検討していただきたいと思います。可能であれば、まずは一台使ってみる。そこから始まるものは、決して小さくないはずです。値段は恐ろしく安くなってきますから。
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