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社長と息子、株式をめぐる想いと攻防。

  10億ビジネスの経営数値成長戦略 野口 タカ子 SPECIAL
野口 タカ子 SPECIAL

10億ビジネスの経営数値成長戦略コンサルタント

株式会社ノグチ経理相談室 代表取締役 野口 タカ子

同族会社の業績を、10億20億事業に成長させる「経営数値」コンサルタント。客数や客単価・生産性などの業績を現す数値と、財務諸表の数値とを統合させることこそ、同族企業の成長の根源であると、「儲かる社長が押さえるべき商売7つの数値の法則」として体系化。頼りになる指導と、評価が高い。

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「社員持株会は社員のもので、僕たち家族は参加できません。でも、ボクは社員と同じ身分だと思っているのです。社員が持てて、会社の仕事をしてるのに、家族が持てない株式って不公平ですよね。」 

生活関連事業を営むS社の子息は入社8年目。

社員100余名の会社で副社長として業務を引っ張っています。

日頃、幹部社員として、社長の部下を任じているのですが、社長の家族だと、会社では不公平だと感じる事件がありました。

今期S社業績が順調だったので社長は決算賞与を出すと発表しました。

配当も5割配当

社長はもちろん株主ですから、配当を受け取ります。

社員持株会に参加している幹部社員も、配当を受け取りました。

「ノグチ先生、教えてください。社員持株会ってなんですか?

僕は、息子だから持株会には入れないって言われました。みんなと同じに会社を大きくするために一生懸命働いているのに、社員は配当もらえて、自分はもらえない。

周りから、家族だから株主と同じに見られるのに、株式も配当も賞与もなし!」 

S社は、上場していません。株式を市場で購入できない会社です。

そのS社が従業員持株会を作ったのは、先代が、保有していた株式を従業員に贈与して、共に利益を共有する幹部社員を育てたい、と強く希望したからです。

社長は、決算時には配当を役員のボーナスになるようにと、利益計画をたてています。

入社当時は、仕事ができないから、賞与がないのも、配当がもらえないのも、当然と思えたのに、入社して8年もたてば、少しはと思う分、悔しさが出てしまいます。

父親の社長が一番多く配当をもらう事さえ、なにか釈然としない不満です。

イヤな話も聞こえました。

幹部社員の一人が、事務職の社員に対してわざわざ自分が株主である事を自慢していたというのです。

「君たち、会社は誰のためにあるか知ってるか?」

「え……。」

「会社は株主のためにあるんだよ。」

文字にすると会社が株主のためというのは、不思議ではないかもしれませんが、上場会社ならともかく、経営者か従業員か、横一線の従業員の中で株主を誇示するのは、わざわざ持っているぞと、自慢し、株式を購入できない平社員の反感を買うだけの特権自慢に思えます。

役員だから決算賞与はもらえない、社長の家族だから持株会に参加できない・配当もない、周りからは社長の息子だから甘い汁があるに違いないと白い目で見られはしないか。マイナーな思いが巡ってで、ガックリしてしまいました。

中堅中小企業の株式は、大きな含み益を持っているのが普通です。

10年20年、中には50年100年と事業を続ける事ができるのは、会社に「力」があるからです。「力」は、自己資本率の高さに現れてきます。

自己資本=出資金額+毎年の利益(今年の利益+去年の利益+3年前の利益…)

事業を続けると続けると、利益が積み重なって、株価は上がっていきます

世間のお役に立っていないと10年は続かない、儲かり続けて後継者を育てないと20年30年と事業を継続していけません。

資金を手当てし人を育て、自社の事業をコツコツ大きくしてきているから、大きな含み益ができる。これは当然の成り行きなのです。

中小企業の経営者にとって持ち株会社をもつメリットは、

  • 会社への帰属意識、経営参加と、やる気を持ってももらうこと
  • 配当や、退職時の株式の買い取りによる利益によって資産形成を援助することです。
  • 同族会社株式が、社員持株会に移転する事で、相続税の対象財産から抜けるメリットも大きな効用です。

 

S社の社員持株会は、先代の相続対策もあって、個人で引き継ぐよりは従業員に渡したいと設立されたものです。一族はその株式に手を出さない約束・設立趣旨を作りました。

まず、持株会についての知識と当社が持株会を作った目的をハッキリさせる事、分からないから、不安になるのです。

社員持株会のできた経緯や、規約、運営方法・一族が得た利益などについて、息子さんは理解しました。もう一方、現社長は、先代が自分のために株式を社員に渡し、社員の協力を取り付けてくれた事が業績の良さにつながっていると感じました。 

次世代、息子の時代の持株会のあり様を考えることが、大きな課題です。

世代交代は必ず起こります。

親の株式を譲ってもらうには、どのような業績を上げなければならないか。

後継者と決めた息子を補佐してくれる社員を見いだす基準はなにか

大きな援軍でもあるけれど、場合によっては株主請求権で対立しかねない株主と、共にどう歩んでゆくべきか

自分がもらいたい・もらいたいばかり思っていたのですね。受け身だったから、なんか損してると感じてしまったんですね」息子さんは、気づきました。

中小企業はほとんどがオーナー経営者です。

オーナー経営者と従業員は、利益を共有しています。

声だかに、株主の権利を主張していた元幹部社員は、退社しました。

S社の持株会は持株会自体が株式を所有しています。

退社時には株式は、もちろん、次世代の幹部候補に分散して購入されました。

S社の持株会は、想いを束ねるための持株会です。

次世代の後継者と仲間を作る株式にする、そして高い業績を上げる大きなステップにする、若い後継者の大きな一歩です。

 

10億ビジネスの経営数値
野口 タカ子

10億ビジネスの経営数値成長戦略コンサルタント

株式会社ノグチ経理相談室代表取締役

野口 タカ子

執筆者のWebサイトはこちら http://www.n-keiei.co.jp/

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