AIが埋めてくれた「理解の隙間」
「西田先生、詳しいことはまだまだ難しいと感じますが、何となく感覚はつかめたような気がします。」とある顧問先に、環境貢献度の考え方についてお伝えする中で、ためらいがちではありますが、先方から示された反応です。新しい概念を説明し、それを消化してもらうことはカンタンではない、今回のコンサルティングを通じてその難しさを改めて認識することができたのでした。
今回取り組んだテーマは、鉄スクラップ再生ビジネスにおける環境貢献度の算定です。鉄スクラップを原料として鉄を再生する場合、新たに鉄鉱石を採掘して製鉄するよりもCO₂排出量を大幅に抑えることができます。この差を環境価値として評価するのが環境貢献度の考え方です。
計算方法としては、まず「もし鉄スクラップを使わず、新たに鉄鉱石から同じ量の鉄を製造したら、どれだけのCO₂が排出されるか」を求めます。次に、実際に鉄スクラップを再生利用する際に発生したCO₂排出量を算定します。そして両者の差し引き、いわゆる「控除計算」によって削減された排出量を環境貢献度として評価するわけです。
一見すると単純な引き算のようですが、実際には対象範囲や前提条件を整理しながら考えなければならず、初めて触れる方には決して分かりやすい概念ではありません。
顧問先は何十年にもわたって鉄スクラップを扱ってこられた会社です。しかし、だからといって鉄スクラップ再生ビジネス全体を環境価値という切り口で整理する機会があったわけではありません。日々の業務として当たり前に行っていることと、その活動が社会にどのような環境価値をもたらしているのかを体系的に理解することとの間には、実は小さくない隙間が存在していたのです。
今回、その隙間を埋めてくれたのがAIでした。会社独自の事例や業務内容、実際の取引の流れなどをAIに整理・分析させ、それを一つひとつ環境貢献度の考え方へ結び付けて説明していくことで、「自社の場合はこういうことだったのか」という具体的な理解へとつながっていきました。その結果としていただいたのが、「何となく感覚はつかめたような気がします」という冒頭の言葉だったのです。
私は最近、AIの本当の価値は「答えを出してくれること」よりも、「理解を助けてくれること」にあるのではないかと考えています。
新しい知識を身につけようとするとき、人はどうしても自分の経験を土台に考えます。しかし、新しい概念ほど、その経験との間にギャップが生まれます。AIは、その人がこれまで積み重ねてきた経験や会社固有の事例を自在に組み合わせながら説明を組み立てられるため、そのギャップを埋める役割を果たしてくれるのです。
もちろん最終的な判断や考え方を整理するのは人間の役割です。しかし、理解へ至るまでの道筋を一緒に作ってくれる存在として、AIはこれまでにない力を発揮し始めています。
環境経営やサーキュラーエコノミーなど、これからますます新しい概念が次々と登場してくるでしょう。そのたびに「難しいから」と立ち止まるのではなく、「まずは感覚をつかんでみる」という一歩を後押ししてくれる存在として、AIは非常に心強いパートナーになってくれるはずです。私はこれからも、コンサルティングには積極的にAIを活用して行きたいと考えています。
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