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「書く」ことは社員へのラブレターであり、事業における逆算のパフォーマンスである。

SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

株式会社りぼんコンサルティング

代表取締役 

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

「書く」ことに対して苦手意識を持つ経営者は多いものです。

パソコンがうまく使えない、パソコンを使って美しい企画書を作成するといったような手法の話ではありません。経営者が「考えたことを言葉にし、紙に定着させる」ことができているか、ということです。

書く、というアクションは「考え方の設計図」をつくることです。「〇〇書で売上増」といったような〇〇書ありきで出発するのではなくて、未来こうなるという「考え方」の見える化であり、事業の逆算を見える化したものです。

先日、スポットコンサルティングにいらした社長の話です。「社員に同じことを何度言っても、なかなか言うことを聞いてもらえない、実行できない。長年いる社員はルーティーンなことはしっかりやるが柔軟性がない。変化に対応できない。どうしたらいいでしょう?」と。

主力商品である調味料をリニューアルをしたいとのことで、スポットコンサルティングにお申し込みされました。もともと家族経営で、社員は10名以下、数名のパートとアルバイトで構成されています。従業員は親戚や友人で身内が多い、というのも特長です。社長、老舗企業の三代目です。

会社の発展において何よりも社長の気概が必要。財務、労務は後で先ずは「利益のあがる売上」。現場主義でやらなければ会社の実情はわからない。さすが、暖簾を守ってきた社長の言葉です。哲学に耳を傾けていると、胸ポケットの携帯電話が鳴りました。ちょっと失礼と部屋の隅でお話しされます。

社員からの電話だったようで「・・・社員も老齢化ですよ。年々頭が固くなってますよ。“商品ラベルが出来上がっていないから先方に試作品を送れない”と言ってきました。先方はラベルを見たいんじゃないんだから、送れと指示したんですがね」と苦笑しておられます。「どんなことでもだいたい四十八回くり返して伝えれば必ず理解する、できるようになる。昔お願いしていた人材育成の先生が言ってましたけどね・・・」と。

わたくしが黙ってお聴きしていると、社長は「実は・・・私はね書くことが苦手でしてね。ウチは総じてツールが弱いんですよ。コザキ先生にお願いして、その辺りのことも強化してもらいたいんです」と本題に入ってきました。

こうしたケースは中小企業ではよくあることです。大企業の場合は社員がみな優秀です。一社員がミスをした時には、全員を集めて全体的に注意し改善を問えば、一度で浸透していくものです。もちろん仕組みが回るようしっかりとしたビジネスの基盤ができています。議事録があり、指示書、企画書が配布されるなど、話し言葉と書き言葉のセットでスピーディに共有されます。

一方、中小企業ではそうはいきません。社長が現場に立って、粘り強く根気よく何度も何度も言葉をかけながら、社員を育てていくことが必要不可欠です。この難しさが骨身にしみている経営者が実践していることは「書く」ことです。

こういう話をした時に、指示書、企画書、〇〇書作成に拒否反応を示す経営者は多いものです。「これを書く時間があったら、口頭で伝えて実践さたせ方が速い」「書くことが目的になっていて、売上につながらない」と。

確かに現実の世界で、経営計画書、経営指針づくり、企画書作成セミナーなどの様子をみていると「書いて完成させる」すなわち「書くこと」が目的になっていて経営者の方のテンションが落ちていくのも理解できます。

が、社長のテンションとは関係なく淡々となすべきが「書く」ことです。なぜなら、経営において「書く」ことは、現場で働く社員のためになすべきことだからです。

社長が〇〇書に書きつけた「言葉」、さらに「図」や「イラスト」「写真」には力があります。社員の興味と感情を刺激して「記憶」を促す効果があります。最近の脳科学では「ワクワク、ドキドキ、好きなことをしているときに、脳から出るシータ波(脳波の一種)によって記憶力が高まる」ことが立証されています。興味のあるものは簡単に覚えられる、ということです。社長の書いた〇〇書は社員の脳を刺激して、社員の記憶に焼き付け定着させます。社員をその気にさせることができます。四十八回反復して伝える社長の熱いパフォーマンスと同じで、社長から社員へ届ける“ラブレター”なのです。

書くこと。

それは中小企業の経営者にとって、社員へのラブレター。熱い想いで「くりかえし伝える」こととワンセット。言葉にすることと書いて伝えることは、ふたつで1つであり、経営者に必要不可欠なパフォーマンスです。

急激に進んでいる人口減少問題が顕在化してきました。マスコミでもようやく取り上げるようになってきましたが、経済の常識が根底から変わっているプロセスにすでに私たちは立たされています。

激減する労働人口を回していくために、書いて共有する仕組みの構築は必要不可欠です。どんなに素晴らしい施策があっても、言葉の定着なしに事業発展はあり得ません。paper(紙)の語源となった繊維質の植物「パピルス」の発見以降、文化の醸成が発展してきたように、「書いて定着させる」は事業発展に必要不可欠な武器のひとつです。

社長、「言葉にできる」だけでは事業発展の武器にはなり得ません。

事業は逆算です。逆算の設計図をしっかりと書かなければ、社員の心に定着させ、社員を動かし、行動につなげることはできません。もろとも衰退を意味します。

“書くパフォーマンス”に真剣に取り組んでおられますでしょうか。忙しい毎日、書くことは手間もかかり面倒くさいことです。だからこそ、できる社長とできない社長のパフォーマンスの差がついてしまうのです。非常に厳しい岐路に立たされています。

 

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