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業務可視化のジレンマ:社員の抵抗をどう乗り越えるか?

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

業務可視化の仕事は企業業務のデジタル化の第一歩であることは何回も述べてきました。ところが、実際にやろうとするとそれが実に難しい、という話を耳にします。おそらく5割以上の企業がそれに失敗している、もしくは中途半端で終わってしまい、十分な成果が得られなかった、という経験をされていると思います。その主要な原因とはなんでしょうか?

その多くの場合は、可視化に対する従業員のネガティブな感覚にあります。それによって社員から十分な協力が得られなかったり、消極的な対応によりなかなか進まない、といったジレンマに陥るのです。このネガティブな感覚はどこから発生するのか?経験的に、以下の様に分類しています。

・あきらめ感に起因するもの

「今更どうせ何をやっても変わらないから、やっても無駄」、「何をしようと、現状が一番良いし、それ以上のことは想像もできない」

・属人化に起因するもの

「自分の仕事の深いところに触れてほしくない。そっとしておいて欲しい。」、「ひそかに残業ができているので、その残業のネタがばれることは避けたい」

前者については、仕事を改革できるプロセスを示すことができれば、比較的容易にプラス思考に変革することができ、あまり根深い問題になりません。問題は後者です。ここには生活残業というダークな部分が存在していますし、「自分しかできない。複雑すぎるので他の人に教えることもできない。」という固定概念で自分の仕事の説明すら断るケースが発生します。非正規の人材がやっている仕事であれば、合理化によって職を失うことまで思い描いてしまいますから、なかなかポジティブに協力してくれない可能性が高まります。

このような雰囲気を感じた場合の解決策はそれほど多くありません。そもそも守りを固められてしまっているので、理論的な説明をしても簡単には納得してくれないからです。そのようなとき、社長には人事評価軸の変更を先に検討するようにお願いをしています。

生活のために残業をしているケースの場合は、法律的にもはや許されませんので、基本給や手当を上げるしかありません。給与を上げる原資さえ確保できる経営環境であれば、対策のしようがありますが、それでもこのマインドの存在はなかなか気が付きにくいものです。いかにしてそれを察知するのか?が最大の課題と言えるでしょう。社長を含む社員の人が根掘り葉掘り聞きまくって、これらのマインドの存在を確認しようとすると、かえって殻を閉ざしてしまうことになるので、ここは私たちのような外部のチカラを活用するのが一番の早道でしょう。

一方、高度に属人化している業務の担当者がいる場合には、「自分の仕事を他の人と共有できたり、合理化できたら厚く処遇する」という方法が最適です。簡単に言ってしまえば「自分の仕事をなくすことができた場合には、給与を増やす」という、一見非常に風変りな評価指標を作るのです。この観点での人事評価は、実は会社のデジタル化にはどうしても必要な要素です。

何をデジタル化するにしても、どうしても仕事の合理化の検討は付いて回ります。それを解決して初めてデジタル化の恩恵を受けられるわけですから、「自分の仕事がなくなることに恐怖を感じる」などということはあってはならないのです。これは、非正規の社員に対しても同様であり、「合理化できたからパートは無しね!」とは絶対に言ってはなりませんし、そのような雰囲気を醸し出すこともご法度です。日ごろから「仕事の合理化ができたら厚遇する」というメッセージを発していくことが肝要です。

中小企業の業務可視化は、このようなネガティブ思考の社員がいるとなかなかうまくいきません。それを肌感覚で感じている社長にとっては、非常に面倒で遠回りに感じ、結果的に可視化に手を付けることがなかなかできないケースが多いと認識しています。それでももはや避けて通れないことになってきているので、まずは合理化思想の社員を厚遇することを少しずつでも言いはじめ、可視化アクションを始める際のハードルを少しでも下げておくことをお勧めします。

 

 

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