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AIを入れても変わりにくい会社の共通点

SPECIAL

マインドポジション経営コンサルタント

株式会社アトリオン

代表取締役 

マインドポジション経営コンサルタント。社員と顧客の心に占める貴社の位置づけ―「マインドポジション」をアップし、業績向上を目指す仕組み構築のスペシャリスト。30年にわたる中小企業のブランディングと組織開発の経験を背景に、マインドポジション経営実践プログラムをオリジナル開発。時代に合わせて組織を刷新したい経営者や、2代目、3代目社長、社員の力を引き出して社内の体制を再構築したい経営者に高く評価されている。新しい切り口に基づく事業の見直しと組織の再開発を通して業績の2ケタ成長を実現するなど、持続可能な企業の成長に向けた力強い支援に定評。株式会社マインドポジション経営研究所代表取締役

AIを入れても変わりにくい会社の共通点

「AIの話題が盛り上がっているのでうちでもいろいろ試しているんだけど、どこから始めるのが正解なんですかね」。ここ半年くらい、こんな相談を受けるようになりました。話を聞いていくと、面白いからいろいろやっているけれど、業務改善や経営に役立つ用途が見つかりにくいということらしい。この問題、実は、会社の側が「AIとどう付き合うか」という前提を持たないままAI導入を考え始めているところに元凶がありそうです。

これは少し前のDXブームの頃ともよく似ています。クラウドが出てきたときも、SaaSが広がり始めた頃も、「うちの業界には関係ない」「若い社員に任せておけばいい」「導入したけど効果が見えない」という話をたくさん聞きました。そしてその頃から、経営者のITに対する眼差しは、実はあまり変わっていないようにも感じています。

変わりにくい会社には、いくつか共通点があります。まず一つ目は、「目的が先、道具は後」という順番が逆転していることです。

「せっかくAIを契約したから、何か使えないか社員に考えてもらっている」。この発想は、一見前向きに見えます。でも実際にはかなり危うい。なぜなら、道具の存在が先に来てしまっているからです。

本来は逆です。「見積作成に時間がかかりすぎている」「営業提案が属人的になっている」「採用面接の情報整理が煩雑になっている」。こうした課題がまず存在し、そのうえで「この部分はAIに任せられないか」と考えるのが自然な順番です。

つまり主語が違うのです。「AIで何ができますか」ではなく、「自分の仕事のうち、どこをAIにやらせたいのか」。この主語に変わった瞬間、AIは急に現実の経営ツールになります。

ところが、変わりにくい会社ほど、この主語の転換が起きません。道具に問いを投げる前に、自分自身の仕事を分解できていないからです。

二つ目は、AIを「万能機械」として見ていることです。

AIという言葉には、どこか魔法の響きがあります。スイッチを入れれば賢い答えが出てきて、勝手に業務が改善される。そんな期待感が世の中には確かにあります。

でも現実はそんなに甘くありません。実際のAIは、むしろ「よくできた新卒社員」に近い。地頭はいい。情報処理能力も高い。こちらの質問に対して、もっともらしい答えも返してくる。でも、自社のことは何も知らないのです。

会社の歴史も知らない。顧客との微妙な関係性も知らない。社長がなぜその判断をしてきたのかも知らない。だから教える必要があるし、任せ方も考えないといけないし、当然確認もしなければいけない。

ところがAIを万能機械と思っていると、「期待したほど便利じゃない」「思ったより使えない」という結論になります。これは、新卒社員に初日から部長レベルの仕事を期待して失望しているのと、実はあまり変わりません。

面白いのは、AIを使いこなしている会社ほど、AIに対する期待値が現実的だということです。万能感がない。むしろ地味です。毎日の小さな業務改善を積み重ねている。派手な革命ではなく、静かな構造改革としてAIを使っています。

三つ目は、「ITは若い社員に任せておけばいい」という感覚です。

もちろん実務として任せる部分はあっていいと思います。ところが、経営者自身がまったく触らないというケースになると話は別です。

AIは単なる作業効率化ツールではありません。情報の扱い方、意思決定の速度、顧客との関係性、組織の知識共有のあり方まで変えてしまう可能性があります。つまり経営そのものに影響を与える道具です。

にもかかわらず、経営者が「よくわからないから若い人に任せている」という状態は、極端に言えば、経営判断の一部を他人任せにしているのと近い。

昔、インターネットが普及し始めた頃にも同じようなことがありました。「ホームページは詳しい社員に任せている」。その結果、経営者自身が自社の情報発信を理解しないまま時代が進み、気づけば競合に差をつけられていた、という話を何度も見てきました。

もちろん経営者がエンジニアになる必要はありません。でも、自分で触ってみること、自分の言葉で違和感を持つこと、自分の頭で問いを立てることは必要です。

AIは、実は経営者の思考を映す鏡のようなところがあります。問いが浅ければ浅い答えしか返ってこないし、思考が整理されていなければ、出力も散漫になる。逆に、自社の強みや顧客理解が深い経営者ほど、AIを使ったときのアウトプットも驚くほど深くなります。

最後に、少し厄介な話を書きます。

AIの本当の怖さは、「便利であること」かもしれません。

文章を書いてくれる。要約してくれる。企画も考えてくれる。検索もしなくていい。確かに便利です。便利すぎるくらい便利です。

でも、人は便利になると考えなくなります。

カーナビが普及して道を覚えなくなったように、スマートフォンで電話番号を記憶しなくなったように、AIによって「考える前に答えを受け取る」習慣が強化されていく可能性があります。

養老孟司さんがよく言うように、人は放っておくと、目の前の前提を疑わなくなります。考えなくて済む状態は、脳にとっては楽だからです。

だからこそ、AI時代に本当に必要なのは、「どう使うか」という技術論よりも、「何を問いとして持つか」という姿勢なのだと思います。

ツールに振り回される会社と、ツールを使いこなす会社。その差は技術力ではありません。経営者自身が、自分の頭で問いを立て続けているかどうかです。

AIを導入したのに会社が変わらない。もしそんな感覚があるとしたら、それは社員の問題でも、ツールの問題でもなく、経営そのものの問い方が試されているのかもしれません。

さて、あなたの会社では、AIに何をやらせていますか。そしてその問いは、本当にあなた自身の言葉になっているでしょうか。

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