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土地みたてのトレーニング法(2)坂道にて

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

土地みたてのトレーニング法(1)角地にてからつづく。

 

住宅地には坂道が多い

 

日本の住宅地には坂道が多く見られます。

市街地の拡張手段として平野に近い丘陵地や山間地を開発した場所が多いからです。

タモリさんは坂道が大好きな方なので「ブラタモリ」などの番組で坂道を見ると嬉しそうにされています。歴史にも地質学にも大変お詳しいので、番組中その由来を推理して言い当てたりしています。見ていると大変勉強になります。地学の授業もこんなのだったら面白かったのにと思います。(いまさらですが)

でも住む人にとっては坂道って、願わくば少なく緩くあって欲しいものです。 それほど大きくない土地では、全面道路が坂になっているかどうかで実際には利用価値に大きな違いが発生することがあります。しかし、よほど極端な坂道でない限りは取引価格にはそれほど反映されていないことが多いように思います。

その一方で、造成計画をする側にも色々事情があります。

丘陵地、特に山間地には平坦な場所は殆どありません。そこに「できるだけ低いコスト・工期で、できるだけ宅地部分を多く確保する造成を行うにはどうしたらいいか?」というロジックで物事が進んでいきます。もちろん、様々な法規に沿ったものでないといけない事も言うまでもありません。その時点では個別の住まい手の利便や住み心地が必ずしも優先されている訳ではないことは断言できます。

古い住宅では道路の中央が高くて輪切りにすると、断面がかなりのかまぼこ型になっているところがあります。また、側溝の幅が小さくて溝ふたもあったりなかったりでハンドメイドの部分も多く、つくりがファジーな場所が見受けられます。そういう場所では側溝のところで道路と駐車スペースがV字断面になっているので、駐車スペースの不具合がよく発生します。奥行きの小さい駐車スペースではどうにもこうにも調整のしようがない場合もあります。

 

↑赤のワーゲンゴルフがかわいそうな感じです

 

↑いきおいよく出入りすると「ガリッ」です。(スポーツカーは無理です)

 

悩ましき外構リフォーム

下の写真の家はご年配のお宅のようです。建物はそこそこ築年数の経った感じですが、外構部分のリフォームをされている最中です。

見たところ、GL(グランドライン=地盤面の高さ)をかなり下げているようです。これで道路と駐車スペースとの高低差が少なくなって、自動車の出入りはしやすくなることでしょう。しかし、地面が下がった分玄関までの高低差が増えてしまいますので、長めのスロープを新たに増設されています。

この場合は既存の土を鋤き取って捨てなければなりません。土は掘り起こすと嵩が増しますので、運び出す際には意外な量になります。そして、鋤き取り作業費、運搬費、処分費が発生します。土地にあったものを減らすにもかなりの費用がかかることになるのです。厳しい見方をすると、不要な土を土地に乗せてならしてあるということは、その土地に負債がしれっと置いてあるのと同じこととも言えます。

「こんなにかかるのなら、最初から捨てといてくれたら」と思うのですが、造成する際にはいかに土を持ち出さずに削る分量と埋める分量を同じに近づけるのが良い設計とされます。その段階では各宅地に少しづつでも土を置いておいて持ち出し量をゼロに近づけたいのです。

 

↑GL(地盤面の高さ)を下げつつスロープで玄関に行けるようリフォーム中

 

↑造成完了時のGL(地盤面の高さ)は矢印あたりであったと思われます

 

↑道路と元々のGL(地盤面の高さ)は最大2mほどあったようです

 

 

造成時の問題を引き継ぐ生活

住宅団地も古くなってくると、新しい家に建て替えられるケースも徐々に増えてきます。前述した理由から、造成完成時にはそれぞれの土地の土の量はどちらかといえば多めの傾向であるといえます。

これまで建っていた古い家を取り壊して、新しい家に建て替える時はその余分な土を調整する絶好の機会なのですが、多くの場合実行されることはありません。土を減らして道路との高さ関係を調整するのに、大きなコストと時間を余分にかけることは、まずつくり手である業者側が避けて通ろうとします。見積金額だけを見せられると、お施主様もそうなるかもしれません。コストと時間に見合うメリット(言い換えれば現状のまま建て替えることの問題点)が見出せないからです。

そうして、数十年前の造成時の必要悪とも言える問題点を更に数十年引き継ぐ生活を新たに作り出してしまうのです。下に紹介するお宅は建て替えられたばかりのようですが、こういう土地は敷地の中に坂道(道路)があるようなものです。自分の所有地ですから、この坂道にも当然に固定資産税や都市計画税などもかかってきます。道路に税金をずっと払い続けるようなもので、気の毒な感じがします。

 

↑GL(地盤面の高さ)が右側の家より1フロア分ほど高くなっています。左側の土地にはこんもり土が盛ってあります(矢印の上部分)

 

↑造成完了時のGL(地盤面の高さ)は矢印あたりであったと思われます

 

↑道路と元々のGL(地盤面の高さ)は最大3mほどあります

 

一般に税額計算の元になる土地の価額などの評価をするときに、利用価値により価額を調整するという考え方はあります。例えば、相続税などの算定に用いられる路線価の評価減のルールとして以下のようなものがあります。(以下国税庁HPより抜粋)

その利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、著しく低下していると認められるものの価額は、その宅地について利用価値が低下していないものとして評価した場合の価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10%を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することができます。る自分なりの仮説を答え合わせしたりもできる訳です。これは便利です。

1. 道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの

 

全文は以下リンクから

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4617.htm

 

しかしながら、土地の高低差に関して評価減を求める不服審査は実際にはほとんどの場合認められていません。形状による評価減の要素は路線価を算定する際にに織り込まれているとの考え方になっているようです。ということは不動産取引上、近隣相場から個別に価格調整を行うという感覚は薄いともいえますので、購入する側が慎重に利用価値を見極める必要があるといえます。

このようなことを見極めることは物件取引が主である不動産屋さんはもちろん、お施主様にもまず難しいと思われます。頼りは工務店ということになります。もし、頼りの工務店がそこに疎いとすると、場合によればお施主様は大きな危険にさらされることになります。

 

社長の会社では、お客様から土地選びの相談があった際に実際の利用価値を検討してあげていますか?また、不動産としての価格に対して建築後の利用価値を比較する提案をされていますか?

 

 

土地みたてのトレーニング法(3)ひな壇にてにつづく

 

 

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