選ばれるためのマインドセット
「西田先生、この体系的な読み解きこそ私たちが欲しかったものなんです。ぜひこの方向性でお願いします。」
先日、とある小規模案件のクライアントさんから言われた一言です。案件の大小に拘わらず、まずはクライアントさんの話をじっくり聞いて、そこから「ニーズはどこにあるのか」を聞き出し、それに即した提案をする。私はそんなアプローチを大切にしています。
「選ばれるにはニーズプルな提案ができること」クライアントさんにも繰り返しお伝えしているこのフレーズは、実は私自身の営業においても鍵となる考え方です。
そもそも、なぜニーズプルでなければならないのでしょうか。ここは少し原則論に立ち返って整理しておいた方が良さそうです。
ビジネスにおける取引は、言うまでもなく相手が価値を感じて初めて成立します。どれだけ優れた商品やサービスであっても、それが相手の課題解決に結びつかなければ、意思決定の対象にはなりません。これはBtoBであってもBtoCであっても同じです。
ところが実際には、「これは良いものだから売れるはずだ」というプロダクトアウトの発想に引っ張られる場面が少なくありません。自社の強みや技術、あるいは過去の成功体験に基づいて提案を組み立ててしまう。そうなると、どうしても相手の状況とのズレが生じてきます。
ニーズプルとは、その逆です。まず相手の置かれている状況を起点にして、「何が問題なのか」「どこに制約があるのか」「どのような意思決定が求められているのか」を丁寧に読み解く。そのうえで初めて、提案の形が見えてくるという考え方です。
この順番を外してしまうと、提案はどうしても独りよがりになりがちです。本人としては最善を尽くしているつもりでも、相手から見ると「それは今求めているものではない」という評価になってしまうことがあるわけです。
ところが実際の商談ではそうでなく、重要なヒアリングの途中であるにもかかわらず、素晴らしいひらめきが起きるということが良くあるのですが、そのひらめきに絡めとられた提案を軸にすると、往々にしてその商談は失注の憂き目に遭います。後から反省する中で常にひっかかるのは「その提案はニーズプルなものだったか?」という点です。
この「ひらめき」というのがなかなか厄介でして、経験を積めば積むほど、その精度は上がっていきます。過去の事例や知識が頭の中で結びつき、「これは使えるのではないか」というアイディアが浮かんでくるわけです。
実際、それが当たることもありますし、それによって大きな成果につながることもあります。ですから完全に否定すべきものではありません。むしろコンサルタントとしては重要な能力の一つだと思います。
ただし問題は、そのタイミングです。ヒアリングの途中でそれが出てきた場合、本来であれば一度横に置いておくべきなのですが、どうしても「これだ」と思ってしまうと、そこに話を寄せに行ってしまう。結果として、まだ十分に把握できていないクライアントさんの状況よりも、自分のアイディアの方を優先してしまうことになるのです。
そうなると、提案は一見筋が通っているように見えても、どこかで現実との齟齬が出てきます。そしてその違和感は、最終的な意思決定の場面で顕在化することになります。
クライアントさんが置かれた状況を冷静かつ客観的に見通して、極力そこにニーズプルな提案を向ける。どんなにナイスアイディアが湧こうが、自らが勝手に産み出したものには執着しない。言うのはカンタンですが、それを実践するのは誰もができることではありません。
ここで一つヒントになるのは、「自分のアイディアを疑う」という姿勢です。ひらめきが出てきたときに、それをすぐに採用するのではなく、「これは本当に相手のニーズから導かれたものなのか」と一度立ち止まって考えてみる。その一手間をかけるだけで、提案の精度は大きく変わってきます。
また、ヒアリングそのものの質を高めることも重要です。表面的な要望だけでなく、その背景にある制約条件や意思決定プロセスまで踏み込んで理解することができれば、ニーズプルな提案の解像度は格段に上がります。
実際、冒頭のクライアントさんのケースでも、最初から特別なアイディアがあったわけではありません。丁寧にお話を伺いながら、断片的な情報をつなぎ合わせていった結果として、「こういう整理が必要なのではないか」という形が見えてきただけなのです。
その意味では、ニーズプルな提案とは「何か特別なことをする」というよりも、「当たり前のことを丁寧に積み上げる」ことに近いのかもしれません。
ただ、その当たり前を徹底するのが難しいからこそ、そこに差が生まれるとも言えます。
選ばれるかどうかは、最終的にはクライアントさんの判断に委ねられます。しかし、その判断の材料となる提案がどのように作られているのかによって、結果は大きく変わってきます。
自分の強みを語る前に、相手の状況をどこまで理解できているか。そこからどれだけ自然な形で解決策を導き出せているか。その積み重ねが、「この人にお願いしたい」と思っていただけるかどうかを分けるのだと思います。
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