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原材料に依存しない「商品展開無限化」の秘策

SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

株式会社りぼんコンサルティング

代表取締役 

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

原材料の高騰または、入手が困難ということで、今後の商品展開に悩んでおられませんか? 最近増えているご相談内容です。先日も、某文具雑貨店T社を経営するT社長が面談にいらっしゃいました。元気のない様子です。東京の郊外にあるT社は、文具の中でも「手で描く、書く」にこだわったライフスタイルの提案が得意な人気店です。

ここ数年は生活者の巣ごもり化で、高級万年筆、ガラスペン、オーダーメイドのインクなどが堅調に伸び、中でも革のステーショナリーが好評でした。「しかし、予期せぬ出来事のせいで…」とT社長、精気がありません。

 “予期せぬ出来事”、とはウクライナ情勢を指しています。革が高騰し、そのものが入手困難になりそう、とのことです。オリジナルのペンケースなど、使い勝手とデザイン性、そして革ケアのワークショップまで、革製ステーショナリー文具は、T社のロングセラー商品です。

T社長は、脱・巣ごもりアイテムを企画していました。例えば、お出かけの時に使う、革の「リップケース」を考案していました。この二年間、巣ごもりによって、化粧品不要、または簡素化する世の中が続いています。が、トレンドには「逆トレンド」があります。ハレのアイテムとして高級化。口紅は特別な日の「お守りアイテム」へと変化しています。最近では、男性もリップを使う人が増えているので、ジェンダーレスを意識したカラー展開を考えていました。

「いろいろ調査して、未来予測で商品展開を考えてきましたが、もう打つ手がありません。自然災害、疫病、戦争、そしてエネルギー危機…、屋台骨が定まるどころか、壊れていきますよ」と、T社長。この2年、がまんしてきた思いが一気に吐露します。

不可抗力が働いている今、リアルな世界と、デジタルがつくるメタな世界と、次元を超えて一つ一つの出来事が絡まっている複雑な時代です。T社長の無力感は、だれもが抱えている共通のマインドです。無力感を放っておけば、諦めに変化し、思考停止。やがて自暴自棄に陥って、自滅の道です。無力感を放置せず、視点を変えてみましょう。

どんな時代でも、人間の智慧と工夫で生き抜いてきた人、集団があります。例えば、老舗企業はその代表例でしょう。和菓子の「虎屋」、酒造の「養命酒」、伝統芸能の「能・狂言」は今に至るまで600年も続いています。当然、自然災害、戦争、疫病などいくつもの動乱を乗り越えて、今に至っているわけです。

こうした企業経営者、主宰者の評伝など、記録を調べますと、共通した特長があります。それは、「世界観を変える」ことが上手です。

その時代の複雑な問題に対峙したとき、彼らが実践してきたことは、「世界観」、わかりやすく言えば、「世界のとらえ方」「モノの見方」や「考え方」を上手に変えることができるのです。わたくしどもの言葉で表現すれば「コンセプト」を変える、ということです。

「コンセプトを変える」というのは単に「いろんな角度から見る」といった、アイデアレベルの話ではありません。行動や実践の核となる「考え方」をリニューアルし、新しく定めること、を意味します。この「定める」、が大事なのです。

自分達のブランドの定義、商品コンセプトの定義、そもそも自社が存在する意味、裏打ちされた歴史、そういうものをひとつひとつ考えて積み上げていくことです。わたくしどもでは、根源から定めたコンセプトを「スーパーコンセプト」と呼んでいて、コンサルティングの中でも一番注力しています。8割、スーパーコンセプトを定めることが、ブラントと事業の未来を決めると考えています。

単に商品特性を並べたコンセプトとはまるで異なるものです。それ自体がエネルギーをもって、今ある商品やサービス、既存技術に作用し働きかけるもの。コンセプトを超えた、超コンセプトという意味で、「スーパーコンセプト」なのです。

スーパーコンセプトを定めれば、今ある商品をテコに、無限に商品展開できるようになります。わたくしどもは「商品展開の無限化」と呼び、独自の方程式をつくっています。その軸となるスーパーコンセプトには、自社の根源、歴史を核にしています。もちろんトレンドをクリックしていることも重要です。人の心を動かす言葉で表現することも必要不可欠です。

原材料が高騰したり、入手できなくて希少になる、事業として衰退の一途をたどっているのは、日本の伝統産業品も同じです。青森県に「笹餅」を手作りしているおばあさんがいます。おばあさんの笹餅には、全国にファンがいます。週に2回、青森のスーパーで200個販売していますが、アッという間に完売します。

この笹餅は35年のロングセラーです。原料となる笹は、おばあさんが山に分け入って収穫します。収穫した葉を一度蒸して、そこに餅を包んで、再び蒸します。全国のファンが買いに来るその味は、青森の山の恵み、森の恵み、川の恵み、そして海と空の恵み、すべてつながっている自然の循環から得られる味なのです。

しかし、地球環境の変化で、こうした恵みが入手できなくなれば、笹餅はつくることができなくなります。T社長と同じです。しかし、おばあさんは、レシピを一冊の本にして、数年前に出版しています。著作の中で、笹餅のどういうところに手と心をかけていくか。笹の葉についての考え方、自然の恵みにたいする哲学をだれもがわかるやさしい言葉で綴り、だれでも理解できるようにしています。

それを読めば、ただ笹餅を売っているだけでないことがわかります。おばあさんの笹餅にも、商品特性を超えた、スーパーコンセプトがあるのです。おばあさんは95才で、この3月で引退です。今、後を継ぎたいという青森市の女性に、作り方を手ほどきしているそうです。

商品戦略について、この混迷のなか、肩を落としているあなたに、わたくしどもは強く伝えたいことがあります。打ち手は無限にあります。今ある商品サービス、今ある技術、今ある素材、今いる人たちで、商品展開が無限化するやり方があります。未来は予測するものではなく、創造するものです。

自社ビジネスにおいて、原材料が手に入らなくなった時、ゼロとしてしまうことが、いちばん簡単でいちばんもったいないことです。トレンドにクリックしながら、少し先の未来をイメージしてください。どんな世界が観えますか? どんな未来にワクワクしますか? もう行き止まりにきているなら、新しい未来を創ればいい。いま、あなたがすべきことは、悩むことではありません。集中すべきは「ビジョンを描く」です。

 

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